MPS製品による家庭用リモコンの最適化

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はじめに

赤外線 (IR) とリモート周波数 (RF) の家庭用リモコンは、サウンドシステム、テレビ、ライティング、その他の制御などのシステムに使用されています。これらのシステムは、音声制御、接続性、LEDディスプレイ、静電容量式タッチパネルなどの機能により、ますます複雑になっています。リモコンは信頼性が高く、使いやすく、バッテリー寿命が長い必要があります。

MPSは、システム全体にわたって家庭用リモコンシステムに対応するために使用できる、費用対効果の高いソリューションを提供します (図1参照)。図1の青で示されている、リモートホームコントロールを最適化するMPSのソリューションは、モータドライバ、LEDバックライトドライバ、監視回路、AC/DCコンバータ、バッテリーチャージャ、ステップダウンコンバータ、ステップアップコンバータ、LDO、PMICです。本稿では、これらの各部品について説明し、それらを使用して家庭用リモコンを設計する方法について説明します。

図1 : リモートホームコントロールのアプリケーションブロック図

モータドライバ

モータドライバは、電気モータの速度、方向、トルク、その他のパラメータを制御する電子デバイスです。これは、モータとマイクロコントローラユニット (MCU) または別の制御システム間のインタフェースとして機能します。モータドライバは、ロボット工学、自動化、電気自動車、家電製品など、多くのアプリケーションに不可欠な部品です。

モータドライバは次のような働きをします。


  • モータに電力を供給し、制御するために電気信号を増幅する。
  • モータに供給される電力を調整する。
  • 過電流 (OC) 状態とモータの焼損を防止する。

モータドライバには通常、MCUまたは専用のドライバIC、パワートランジスタ、保護回路が含まれます。モータドライバには、ブラシ付きDCモータドライバ、ブラシレスDC (BLDC) モータドライバ、ステッピング モータドライバなど、さまざまな種類があります。

ファンやカーテンの場合、モータドライバを使用して、ユーザーのコマンドに基づいて調整を行うことができます。これらの調整には、速度 (ファンの回転速度を遅くするなど)、方向、位置 (カーテンを閉じる、または開くなど) が含まれます。

モータドライバは、スムーズな操作と低い待機電力を実現してバッテリー寿命を延ばしながら、ユーザーエクスペリエンスとエネルギー効率を向上させるために正確な制御を提供する必要があります。

制御とは別に、モータドライバは、これらのアプリケーションのモータの動作に必要な電力を供給しますが、マイクロコントローラではできません。MPSには、 BLDCおよびステッピングモータ用のモータドライバ が揃っています。

MP6539は、三相ブラシレスDC (BLDC) モータドライバアプリケーション向けに設計されたゲートドライバICです。最大100Vの6つのNチャネルパワーMOSFETで構成される3つのハーフブリッジを駆動できます (図2参照)。

図2 : MP6539の代表的なアプリケーション回路

MP6539は、露出サーマルパッド付きのTSSOP-28 (9.7mm x 6.4mm) とQFN-28 (4mm x 5mm) パッケージで提供されます。

LEDバックライトドライバ

ユーザーインタフェース内では、LEDバックライトドライバがLCDまたは同様のディスプレイのLEDバックライトに電力を供給し、制御します。一貫した明るさと色を保証し、周囲のライティング条件に適応し、電力消費を最小限に抑えます。これは、電力消費が制御されていないとバッテリーの消耗が早くなる可能性があるため、バッテリー駆動デバイスでは特に便利です。

LEDバックライトドライバは次のような働きをします


  • LEDの寿命を延長する
  • 高い色精度を提供しながら LCD 画面のパフォーマンスを最適化する
  • 均一なバックライト分布を確保する
  • 調光機能を可能にする

MPSは、商業用、産業用、車載用ライティングのニーズに対応する、堅牢でコスト効率の良い LEDドライバを提供します。

MP3318は、ピーク電流モード制御を使用する白色LEDステップアップコンバータで、内部レジスタによって設定されたLED電流 (ILED) を調整します。最大LED電圧 (VLED) は最大38Vで、5インチを超えるLCDパネルアプリケーションで10個のLEDを直列に駆動できます。さらに、11ビットの超高分解能による線形および指数アナログ調光に対応し、調光電流を正確に制御します (図3参照)。

図3 : LEDの明るさ

豊富な保護機能には、LED開放および短絡保護、サイクルごとの電流制限保護、およびサーマルシャットダウンがあります。I2Cインタフェースにより、MP3318は保護しきい値、調光モード、LED 電流ランプなどのパラメータを柔軟に設定できます。図4は、MP3318の代表的なアプリケーション回路を示します。

図4 : MP3318の代表的なアプリケーション回路

MP3318は、小型のWLCSP-12 (1.3mm x 1.7mm) パッケージで提供されます。

監視回路

MCUの場合、監視回路は電源状態をモニタし、ブラウンアウト検出やリセットなどの安全機能を利用して、MCUが安全な電圧範囲内で動作することを保証します。監視回路は、電源障害時にMCUが誤動作することを防ぎ、信頼性を高め、信頼性の高いユーザー操作と応答性を保証します。

監視回路は次のような働きをします。

  • MCUが指定された電圧範囲内で動作することを保証する
  • 供給電圧が定義されたしきい値を下回った場合にリセット信号を自動的に生成する (例: 電圧低下検出)
  • MCUが応答しなくなったり、未定義の状態になったりした場合にMCUをリセットする
  • 停電後にMCUが正しく再起動することを保証する

この回路は、システムの信頼性を維持し、損傷を防ぎ、重要なアプリケーションでMCUが適切に機能することを保証するために不可欠です。

MPSは、ホームオートメーションデバイス用にさまざまな監視回路を提供します。MP6400ファミリはマイクロプロセッサ (µP) 監視回路です。リセット電圧は、工場出荷時に0.9V~5Vの標準電圧レールに設定でき、MP6400DG(J)-01のリセット電圧は、柔軟性を高めるために外部抵抗分圧器を使用して調整できます (図5参照)。

図5 : MP6400機能ブロック図

SENSE電圧 (VSENSE) がそのしきい値を超えると、ユーザープログラマブルな遅延時間の後、ロジックハイに駆動されます。±1%のしきい値精度を達成するための高精度リファレンスを提供します。リセット遅延時間は、CDELAYピンとGNDピンの間に接続されたコンデンサを使用して2.1msから10sに設定できます。MP6400の静止電流 (自己消費電流) は1.6μAと非常に低く、バッテリー駆動のアプリケーションに最適です。MP6400は、QFN-6 (2mm x 2mm) およびTSOT23パッケージで提供されます。

AC/DCコンバータ

AC/DCコンバータは、家庭用AC電源をDC電圧に変換するリモコンに電源を供給したり、そのバッテリーを充電したりできます。理想的なAC/DCコンバータは、コンパクトな設計で高い効率を提供し、電力損失を削減し、エネルギー規制への準拠を保証する必要があります。AC/DCコンバータは、電子機器の電源、バッテリー充電、電気自動車、再生可能エネルギーシステムなどのアプリケーションで広く使用されています。

AC/DCコンバータは次のような働きをします。

  • ダイオードまたは制御スイッチを使用して、AC入力をパルスDC電圧に変換する
  • コンデンサとインダクタを使用して、パルスDC電圧をフィルタリングして平滑化し、安定したDC出力する
  • AC入力電圧や出力負荷条件の変動に関係なく、一定のDC VOUTを維持する
  • 低電圧保護 (UVP) や低電圧誤動作防止機能 (UVLO) など、接続されたデバイスに保護を提供する

これらのコンバータは、AC電源とDC電源デバイス間の互換性を確保し、効率的なエネルギー変換と信頼性の高い動作を可能にします。MPSは、AC/DC変換用の幅広い製品を提供します。

HFG610-65は、UVLO、プライマリセンス出力過電圧保護 (ZCD OVP)、プライマリセンス出力UVP (ZCD UVP) などの高度な保護機能を備えたGaN HEMTを統合した擬似共振 (QR) フライバックレギュレータです (図6参照)。

このデバイスは、受動素子のサイズを縮小し、より高い電力密度を実現するために、より高い周波数を備えた二次側レギュレーション (SSR) ベースの一次側レギュレータです。また、過熱を引き起こす可能性のある継続的な過電流状態から保護するための過負荷保護 (OLP) も備えています。

図6 : HFG610-65の代表的なアプリケーション回路

HFG610-65は、QFN-25 (7mm x 7mm) パッケージで提供されます。

バッテリーチャージャ

バッテリーチャージャは、過充電を防ぐために電流と電圧を管理し、リモコンのバッテリーなどの充電式バッテリーを安全に充電します。バッテリーチャージャは、再利用可能なバッテリーの採用を促進することで廃棄物の削減に役立ち、正確な充電アルゴリズムによりバッテリー寿命をさらに最適化できます。

バッテリーチャージャは次のような働きをします。

  • バッテリーに損傷を与えることなく充電するために適切な電圧と電流を供給する
  • バッテリーの充電レベル、温度、状態を検出し、充電プロセスを最適化する
  • OVPや過熱保護などの保護メカニズムをシステムに組み込む

バッテリーチャージャは、スマートフォンから電気自動車 (EV) に至るまで、さまざまなデバイスの充電式バッテリーの機能と寿命を維持します。MPSは使いやすく、設定可能なバッテリー管理ソリューションを提供し、独自のシリコン技術を活用して、高度な機能集積と優れた熱性能を実現します。

MP2615Dは、パワーMOSFETを内蔵した1セルリチウムイオンまたはリチウムポリマーバッテリーパック用のモノリシックスイッチングチャージャで、QFN-16 (3mm x 3mm) パッケージで提供されます (図7参照)。充電を最適化しながら安全な動作を確保するために、MP2615Dは各状態におけるバッテリーの温度と充電状態をモニタします。

図7 : MP2615Dの代表的なアプリケーション回路

電流の逆流を阻止するための外部逆流防止ダイオードは必要ありません。チャージャは±0.75%のバッテリーフル電圧 (VBATT_FULL) の精度、設定可能な安全タイマー、およびバッテリーの損傷を防ぐための完全に消耗したバッテリーの事前調整機能を備えています。さらに、最大99%のデューティサイクル動作を特徴としています。MP2615Dは、バッテリー温度モニタによるサーマルシャットダウン保護を提供し、セルを過熱から保護します。

非絶縁電源

ステップダウンコンバータ

非絶縁電源内では、ステップダウンコンバータは、高電圧 (バッテリーやAC/DC入力など) を、MCUセンサやPoL (Point-of-Load) に電力を供給できる低電圧に変換します。熱とエネルギーの損失を減らすことで電力効率が向上し、バッテリーの寿命が延び、出力電圧を受け取るデバイスを保護することもできます。

ステップダウンコンバータは次のような働きをします。

  • 高周波スイッチング素子 (通常はトランジスタ)とダイオードを使用して入力電圧 (VIN) を制御する
  • インダクタとコンデンサを使用してエネルギーを蓄積および放出し、VOUTを平滑化する
  • スイッチング素子のデューティサイクルを調整してVOUTを調整する
  • 電力損失を最小限に抑え、高い変換効率を実現する

ステップダウンコンバータは、高電圧電源から低電圧電子回路およびデバイスに電力を供給します。MPSは、ホームオートメーションアプリケーション用の降圧型コンバータに対して多くのオプションを提供しています。

MP8886は、PMBus制御インタフェースを備えた2相、2出力、高効率な、同期整流ステップダウンコンバータです (図8参照)。PMBusとマルチタイムプログラマブル (MTP) メモリは、出力電圧 (VOUT)、選択可能な高度な非同期変調 (AAM) モードまたは強制連続導通モード (FCCM)、および保護しきい値などのパラメータを柔軟に設定できます。

VOUTは0.6V〜24Vの間で設定できます。MP8886は、広いVIN範囲にわたって、2チャネルで最大3Aの連続出力電流 (IOUT)、または単一チャネルで最大6Aの連続IOUTを実現します。必要に応じて、複数のICを並列に接続して最大36AのIOUTを実現できます。豊富な保護機能には、VIN低電圧誤動作防止機能 (UVLO) 保護、過電圧保護 (OVP)、過電流保護 (OCP)、サーマルシャットダウンなどがあります。

図8 : MP8886の代表的なアプリケーション回路

これは、TQFN-26 (5mm x 5mm) パッケージで提供されます。

ステップアップコンバータ

非絶縁電源内では、ステップアップコンバータが低いバッテリー電圧を、MCU、PoL、高出力LEDなどの特定の部品に必要なより高いレベルまで昇圧します。バッテリー電圧が低下しても安定したパフォーマンスを提供し、バッテリーの使用寿命を延ばします。

ステップアップコンバータは次のような働きをします。


  • 高速スイッチング素子 (トランジスタなど) とダイオードを使用してVINを管理する
  • インダクタを使用してスイッチング サイクル中にエネルギーを蓄積し、より高い電圧で放出する
  • スイッチング素子のデューティサイクルを調整してVOUTを調整する
  • エネルギー転送プロセスを動的に制御することで、より高い出力電圧を実現する

昇圧型コンバータは、利用可能な入力よりも高い動作電圧を必要とするアプリケーションにとって不可欠です。MPSは、幅広いアプリケーション用に高効率な昇圧型コンバータを実現します。

MP3416は、ピーク電流制御モードで動作し、優れた過渡応答を提供するステップアップコンバータです。内蔵のPチャネル同期整流器 (SR) によりショットキーダイオードが不要になり、最終ソリューションがさらに簡素化されます。MP3416は、0.86Vまで低いVINで動作でき、1.8V~5.5VのVOUT範囲を提供します。

軽負荷時には、ピーク電流は約350mAまで低下し、デバイスはパルススキップモードに入り、電力損失を削減します。このデバイスは過熱保護機能を備えており、155°Cでのサーマルシャットダウンを備えています。図9はMP3416の一般的なアプリケーション回路を示しています。

図9 : MP3416の代表的なアプリケーション回路

MP3416は、TSOT23-8とQFN-8 (1.5mm x 2mm) パッケージで提供されます。

低ドロップアウト (LDO) レギュレータ

非絶縁電源では、低ドロップアウトレギュレータ (LDO) が高いVINを低いVOUTへ変換し、低電圧部品に電力を供給します。スイッチングレギュレータとは異なり、LDOは線形でノイズのない出力を提供します。LDOは、敏感なアナログ回路とRF回路のパフォーマンスを向上させます。LDOは、入力と出力の電圧差が小さい場合に特に便利です。

LDOレギュレータは次のような働きをします。


  • 制御回路とパストランジスタを使用して一定のVOUTを維持する
  • クリーンで低ノイズの電力出力を提供する
  • サーマルシャットダウン保護機能を内蔵し過熱を防ぐ
  • 過度の電流の引き込みを防ぎ、信頼性の高い動作を保証する

シンプルさ、低ノイズ、コンパクトな設計が重要な場合は、LDOレギュレータが推奨されます。MPSの低ドロップアウトレギュレータは、バッテリーの消耗を最小限に抑える必要がある低電流の車載用サブシステムに最適です。

MP2015Aは、高電圧バッテリーを備えたシステムに電力を供給するリニアレギュレータです。デバイスの低自己消費電流と低ドロップアウト電圧により、極めて低い電力レベルでの動作が可能になり、MCUやバッテリー駆動のデバイスに最適です。さらにMP2015Aは、さまざまな固定オプションを提供します : 1.8V、1.9V、2.3V、2.5V、3V、3.3V、3.45V、5V。また、調整可能なVOUTオプションは1.215Vから15Vまでです (図10参照)。

図10 : MP2015Aの代表的なアプリケーション回路 (さまざまなバリエーション)

MP2015Aにはサーマルシャットダウンと電流制限故障保護も含まれており、QFN-6 (2mm x 2mm)、QFN-8 (3mm x 3mm) およびTSOT23-4パッケージで提供されます。

電源管理IC (PMIC)

非絶縁電源では、PMICは複数の電源機能 (ステップアップ、ステップダウン、制御など) を 1つのICに搭載しています。PMICはPCBのサイズと部品数を削減し、設計を簡素化し、システム全体の効率を向上します。万が一PMICに障害が発生した場合でも、システム全体で複数の部品を試験する必要がないため、問題に対処する時間も大幅に短縮されます。

PMICは次のような働きをします。


  • 内蔵した降圧、昇圧、またはリニアレギュレータを使用して、複数の安定化電力出力を実現する
  • システムのさまざまな部品の電源が正しい順序でオンまたはオフになることを保証する
  • サブシステムおよび周辺機器への電力供給を管理する
  • バッテリー寿命を延ばすための省エネモード (スリープモードやスタンバイモードなど) をサポートする

PMICは、高い電力密度を必要とする複雑な最新の電子機器でよく使用されます。MPSのPMICおよびマルチ出力製品ファミリには、降圧型コンバータ、昇圧型コンバータ、昇降圧型コンバータ、電気ヒューズ、ロードスイッチ、リニアレギュレータが内蔵されています。

MP5416は、4つの高効率なステップダウン、 DC/DCコンバータ、5つのLDO、および柔軟なロジックインタフェースを内蔵しています (図11参照)。DC/DCコンバータ用のコンスタントオンタイム (COT) 制御方式は、高速過渡応答を実現します。さらに、MP5416の電源オン / オフシーケンスは、ワンタイムプログラマブル (OTP) メモリを介して設定することも、I2Cバスを通じてオンラインで制御することもできます。豊富な保護機能には、低電圧誤動作防止機能 (UVLO)、過電流保護 (OCP)、サーマルシャットダウンなどがあります。

図11 : MP5416の代表的なアプリケーション回路

これは、QFN-28 (4mm x 4mm) パッケージで提供されます。

結論

本稿では、家庭用リモコンシステム用のモータドライバLEDバックライトドライバ監視回路AC/DCコンバータバッテリーチャージャステップダウンコンバータステップアップコンバータLDO、および、PMICについて述べました。また、各カテゴリから家庭用リモコンを最適化するために使用できるMPSデバイスも紹介しました。

家庭用リモコンのMPS部品により、ユーザーは信頼性の高い操作によるパフォーマンスの向上、エネルギーコストの削減による効率性の向上、リモコンなどの製品のよりコンパクトな設計といったメリットを享受できます。MPS製品は、スムーズな制御、応答性、統合を提供することで、ほとんどのアプリケーションを通じてリモートホームコントロールを最適化できます。

このアプリケーションで使用できる他のデバイスについては、家庭用リモコンシステムのアプリケーションブロックをご覧ください

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