eMotionTMとバッテリバックアップを備えたMPSのオープンソース非常用人工呼吸器

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はじめに

COVID-19が2020年3月に蔓延した際、非常用人工呼吸器の世界的な不足が最大の懸念事項の1つでした。人工呼吸器の需要の増加は、それがすぐに供給されなくなることを意味したので、モノリシックパワーシステムズ (MPS) のチームは、この危機へのソリューションを作成するのに役立とうと考えました。MPSは医療機器メーカーではありませんが、エンジニアや設計者はパワーエレクトロニクスとモータ制御の経験が豊富です。換気装置、呼吸器、人工呼吸器タイプの機械の技術的アーキテクチャを前提に、MPSは世界のパンデミックとの闘いを支援するために人工呼吸器の専門知識を活用しました。

本稿では、MPSのオープンソース「非常用人工呼吸器」の開発プロセスを要約すると同時に、MPSパワーソリューションが電子システムの設計と開発をどのように強化できるかを示します。

ベンチマーク

差し迫った人工呼吸器の不足に対処できる特定のニーズを考えると、MPSはメーカーやDIYコミュニティに目を向けました。この調査により、非常用人工呼吸器プロジェクト (E-Vent) は、MITの技術および医療チームによって開発され他ことが分かりました。MITのE-Ventプロジェクトはオープンソースの試みで、手動バッグバルブマスク (BVM) を自動化することで、世界中のチームが独自の非常用人工呼吸器を構築するために参照する臨床情報およびリファレンスデザインを提供しました (図1参照)。

図1 : MIT E-Vent バージョン3 プロトタイプ (1)

注 :


1) この画像はMITから取得しました。

本格的な人工呼吸器は複雑な機械です (図2参照)。人工呼吸器は、患者の肺に空気を強制的に出入りさせるだけではなく、空気量、流量、酸素含有量、さらには空気の温度と湿度を制御します。さらに、患者を危険にさらす可能性のある状態は、適切なアラームまたは是正措置をトリガーするために監視する必要があります。

図2 : 人工呼吸器とBVMの例 (2) (3)

注 :


2) この画像はDräger (ドレーゲル) から取得しました。


3) この画像はAmbuから取得しました。

これに対し、E-Ventシステムなどの自動BVMは、フル機能の人工呼吸器ではありません。自動BVMは換気を提供し、基本的なレベルの安全監視を含みますが、それ以外の場合は手動プロセスを自動化する緊急使用ブリッジデバイスです。自動BVMは、人工呼吸器が利用可能になるまで患者を維持し、医療従事者が一度に複数の患者をサポートできるようにすることを目的としています。

「人工呼吸器」は、換気を提供するデバイスを表す言葉として広く使用されていますが、緊急使用の自動BVMマシンとフル機能の人工呼吸器との違いに注意することが重要です。BVMマシンは、潜在的に医療上のリスクを引き起こす可能性のあるブリッジデバイスであり、必要不可欠な場合にのみ使用する必要があります。

MPS非常用人工呼吸器の設計改善

MPSの設計は、Arduinoベースのマイクロコントローラを使用してユーザー入力を処理し、主要なパラメータを監視し、DCモータを駆動してBVMを圧迫するMITのE-Ventシステムの主なアーキテクチャに従っています。MPSソリューションは、シームレスなバッテリバックアップを含めることで電源管理を向上させ、ブラシレスDC (BLDC) スマートモータを利用することでモータ制御を改善します。この新しい設計では、市販のドライブトレイン部品を統合してコンパクトなデバイスを作成します (図3参照)。

図3 : MPSオープンソース「Emergency Ventilator 非常用人工呼吸器」バージョン2 プロトタイプ

主な統合部品には、次のデバイスが含まれます。

  1. MP2759、パワーパス管理付きのスイッチングチャージャ (EV2759-Q-01A評価ボードの一部として)。
  2. MPM3510A、同期整流ステップダウンコンバータモジュール (EVM3510A-QV-00A評価ボードの一部として)。
  3. MP3910A、昇圧PWMコントローラ (EV3910A-S-00A評価ボードの一部として)。

カスタムプリントされたPCBは、これらの部品を単一のボードに統合することができますが、MPSソリューションは、コンパクトなソリューションを作成しながら、開発時間を短縮するために、事前作成済みの即利用可能なストックされた各製品の評価ボードを利用します。

図4 : MPS非常用人工呼吸器システムブロック図

このソリューションでは、EV2759-Q-01Aは標準の19V AC電源アダプタ (ラップトップなど) から一次入力電源を取り、バッテリが人工呼吸器に電力を供給している間、内蔵バックアップバッテリへの給電を維持します。EV2759-Q-01Aの最大入力電圧は36Vで、バッテリ調整電圧と最大3A給電電流を持つ直列の1〜6セルのバッテリを扱うことができます (図5参照)。

このソリューションで使用される電池は、RC車や小型ロボットに広く使用されている14.8V、4S、6000mAhリチウムパックです。AC電源が取り外されても、システムの電源や動作が妨げられないため、停電や患者の搬送中でも非常用呼吸器を継続的に操作できます。EV2759-Q-01Aは、AC電力損失イベント中にアラームをトリガーするように設定できます。このアラームは、AC電源が復旧するとクリアされます。

図5 : MPS EV2759ボードとバックアップバッテリ

MPM3510Aは、Arduinoマイクロコントローラに連続的で安定した電力を供給するために、メインシステム電圧を下げます。Arduinoがシステムを制御するため、信頼性と正確な電源が必要です。MPM3510Aは、4.5V〜36Vの入力電圧範囲に対応し、0.8Vまで調整可能な出力を備え、1.2Aの連続負荷電流機能を備えています。

MP3910Aは、24V BLDCスマートモータに供給するためにメインシステム電圧を高めます。Arduinoと同様に、モータ・ドライバは一貫した性能を実現するために信頼性の高い電源を必要とします。非常用人工呼吸器システムでは、モータ性能が一貫していない場合、不正確な空気供給につながる可能性があります。MP3910Aは、標準の9V〜14V入力電圧範囲を備え、24V出力をしっかりと調整してピーク電力モータ要求に十分な電流を供給します。

図6 : MPS EV3910A(左)とEVM3510A(右)

BVMを圧迫するモータは、MPSの EVKT-MSM942077-24、42mm、フレームサイズ (NEMA-17) と統合MPSスマートモータモジュール (MMP742077-24-C) を備えた77W BLDCスマートモータです。これらはどちらも 、サーボドライブモジュールとキット のMPS eMotionTMシステムラインの一部です。モータはRS485を介してArduinoに接続され、MPSが開発した「MSMMotor.h」のArduinoライブラリからのコマンドを使用して制御します。

EVKT-MSM942077-24 は、強力、コンパクトでシンプルなソリューションを提供し、BLDCモータ制御をより使いやすくします。スマートモータモジュール内には、統合された磁気角度位置センサ、フィールド指向コントローラ (FoC)、およびパワドライバがあります (表1参照)。この装置はRS485およびPULSE / DIR入力インタフェースの選択、77Wの連続出力、および0.3°の位置分解能を備えています。 EVKT-MSM942077-2は、設計者が機械スクイーズアームが「開く」方向で組み込みの機械的停止点に接触する時を検出するホーミングルーチンを実装するために、電流測定を使用することを可能にします。このハードストップは、起動時にモータのゼロポジションを設定して一貫したパフォーマンスを確保するため、別のホーミングスイッチの必要性を排除し、システム設計を簡素化します (図7参照)。

表1 : スマートモータモジュール部品

MPS部品 説明 数量
MP6570 高精度角度センサを備えた三相BLDCコントローラ 1
MP6710 eMotion SystemTMサーボモータコントローラ 1
MPM3510A 集積したインダクタとPGピンを備えた36V入力、1.2Aモジュール同期整流ステップダウンコンバータ 1
MP1907A 100V、2.5A、高周波ハーフブリッジ ゲートドライバ 3
MPQ2013A 40V、150mA、低静止電流リニアレギュレータ 2

図7 : 起動時にホーミング操作を行う人工呼吸器システム

MPSの非常用人工呼吸器の機械設計は簡単で、可能な限り標準的な商業部品を利用します。商用部品を使用しない場合、このソリューションには、シンプルなカスタムの機械部品を組み込みます。例えば、スクイーズ・パドルはBVMの形状に合致する3Dプリントブロックです。

機械設計の技術的要件は、さまざまな吸気と呼気 (I:E) 比で特定の範囲の毎分呼吸数 (BPM) を提供します。MITプロジェクトが提供するBPMとI:Eの比率の範囲に基づいて、BVMを圧迫する力の要件に関する推奨事項と共に、MPSは EVKT-MSM942077-24で使用するために必要なギア低減比を計算しました。MPSは、標準の100:1ギアボックスと終減速比が200:1のギアセットをに取り付け、必要な速度とトルクレベルを達成しました。圧力センサ、アラームブザー、ディスプレイパネル、ボタン、ノブ、スイッチなどの他の部品は、すべて標準部品であり、システム設計者が使用できる同等の部品に置き換えることができます。

図8 : モータからの入力と100:1の惑星ギアボックスを備えたドライブトレインのメインギア

MPSが最初の機能的なプロトタイプを作成した後、ビデオ、プロジェクトのウェブサイト、ネットワークアウトリーチによる紹介を通して広報を行いました。開発プロセスについて複数の連絡先やグループが通知され、設計に特有の電気的機能を統合するための支援が提供されました。しかし、MPSはこの設計を製造しませんでした。このソリューションが作成される頃には、多くの人工呼吸器メーカーが供給不足に追いつき、新型コロナウィルスの治療オプションでは人工呼吸、特にBVMマシンのような非常用の人工呼吸器にあまり焦点を当てていなかったのです。将来の使用のために、MPSは必要に応じて使用可能なバージョン 2 プロトタイプを設計しました (図9参照)。

図9 : MPSのオープンソース「非常用人工呼吸器」(左側はバージョン1、右側がバージョン2)

結論

MPSは、この世界的な取り組みの一部であったMIT E-Ventプロジェクトとメーカーコミュニティの多くの人々に感謝したいと思います。このコミュニティのアイデアが、非常用人工呼吸器の設計、開発中に重要な参考資料を提供しました。MPSはまた、BVMスクイーズパドルの形状やトルク要件などのシステム設計の詳細を微調整するために、肺シミュレータでデバイスをテストするのを支援していただいたサンタクララバレー医療センター (SCVMC) の医療チームのご協力に深く感謝しています。

自動BVMマシンで使用する設計や部品 (全BOM、3D設計ファイル、Arduinoコントロールコードを含む) の詳細については 、「オープンソースの呼吸器プロジェクト」ページを参照してください。

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