DC高速給電システム: LLCトランスドライバで電力密度を最大化

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はじめに
世界中がカーボンニュートラルを目指す中、電気自動車 (EV) は内燃機関の自動車から急速に市場シェアを獲得しています。しかし、充電しないでどれくらいの時間運転できるかわからないため、走行距離に対する不安があります。これに対処するために、世界中の政府は充電インフラに大規模な投資を行っています。
充電ステーションの種類
現在、レベル1 /レベル2 (L1 / L2) の充電ステーションから、最大400kWの電力を供給できるDC急速充電 (DCFC) ステーションまで、何種類かの充電ステーションが使用されています (図1参照)。

図1: 電気自動車の充電ステーション
これらの充電ステーションについて、以下で詳しく説明します。
- L1 / L2: これらのステーションは、電気自動車を充電するためのAC電源を提供します。EVを完全に充電するには通常8時間以上かかります。L1チャージャは、AC電力3kW以下で充電します (つまり、1時間の充電で2~10マイル運転できます)。一方、L2チャージャはAC電力3kW~19kW (1時間で10~25マイル) の定格です。
- DCFC: この充電ステーションは、充電ステーション自体の電力定格 (50kW~400kW) および車両が充電できる最大電力に応じて、40分以内にEVバッテリを20%~80%まで充電できます。
自宅や職場で充電する場合は、L1 / L2ステーションで十分です。ただし、DCFCとスーパーチャージャのステーションは、バッテリの全容量を使って長距離の運転をして旅行をする場合など、充電が長時間できなくなる人に必要です。
図2は、L1 / L2 AC充電とDCFCの両方にグローバルに使用されるさまざまなタイプのコネクタを示しています。DCFCは便利で迅速にエネルギーを補充しますが、充電率が高いと、AC充電よりも早くEVバッテリが劣化します。L1 / L2充電では、EVの車載チャージャを利用して、AC電力をDC電力に変換し、バッテリを充電します。一方、DCFCステーションには、電力網からのAC電力をDC電力に変換するためのすべてのパワーエレクトロニクスを備えており、車両のバッテリを直接充電できます。
テスラは、CCS2コネクタも提供しているヨーロッパ以外のすべての市場で、スーパーチャージャに独自のプラグを使用していますのでご注意ください。

図2: 世界のチャージャコネクタ
図3は、電気自動車を充電するために3相AC電圧を250V~800VのDC電圧に変換するための一般的なDC急速充電ステーションのブロック図を示しています。DCFCステーションには通常、これらのサブユニットがいくつか含まれており、それぞれが30kW~75kWの範囲です。この図は、絶縁型ゲートドライバ、絶縁型電源モジュール、トランスドライバ・バイアス、統合型電源を備えたデジタルアイソレータソリューションを含む、DC急速充電ステーションを駆動できる多くのソリューションを示しています。

図3: DCFCサブユニットのブロック図
図3は、DCFCシステムが一般に2つの変換ステージで構成されていることを示しています。最初のステージは力率補正 (PFC) ステージで、電力網からのAC電圧を800V~1300Vの中間DC電圧バスに変換します。PFCステージでは、3相、3レベルの整流器 / インバータトポロジーが一般的に使用されます。この特別なトポロジーは、3相の電力網と接続できる3レベルのコンバータを指します。
2番目のステージ (DC/DCステージとも呼ばれる) では、絶縁型DC/DCコンバータが、中間DC電圧を、充電されているバッテリに固有のターゲット電圧に変換します。LLCおよび位相シフト・フルブリッジコンバータは、DC/DCステージの一般的なトポロジーの選択肢です。
高電力充電ステーションを設計する際の課題のいくつかは、電力密度の最大化、コストの削減、およびサイズの縮小です。効率を高めるための業界全体での方法の1つは、半導体MOSFET / IGBTを炭化ケイ素 (SiC) FETに置き換えることです。DCFCステーションの電力が50kW~400kW以上に増加したため、これは特に重要です。
DCFCシステムの高電圧および高電力の性質のせいで、高電圧電力変換回路から発生する可能性のある潜在的な危険や障害からユーザーと低電圧制御回路を保護するために、絶縁したデバイスが必要です。ハザードの危険性を減らすために、次のような追加部品を実装できます。
- MP18831とMP18851のようなSiC MOSFETおよびIGBT用の絶縁型ゲートドライバ
- MPQ27811とMP27631のようなデジタル信号アイソレータ
- MCS1806とMCS1803のような絶縁された電流検知および電圧検知デバイス
絶縁型ゲートドライバには電源用の絶縁バイアス電源が必要であり、ゲート駆動電源は高い絶縁電圧に耐えられる必要がありますのでご注意ください。少なくとも、ゲートドライバ電源は中間DCバス電圧に耐えることができ、高電圧側から低電圧側への妨害を最小限に抑えるために低い絶縁容量を提供する必要があります。
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ゲート駆動用の絶縁型電源の設計
MPQ18913は絶縁バイアス電源用のトランスドライバです。このデバイスは、SiCゲートドライバの絶縁したバイアスとしてSiC FETと連携できます。フライバックトポロジーは、SiC FETを駆動する絶縁型18V / -4V出力を提供するために、絶縁型電源によく使用されます。図4は、18V / -4V出力を実現するためにMPQ18913で実装された代表的なアプリケーション回路を示しています。出力数は使用するトランスに基づいて構成でき、出力電圧は巻数比によって変更できます。

図4: MPQ18913アプリケーション回路
MPQ18913は、LLCコンバータとして使用できます。これは、絶縁ゲート駆動電源の最も効率的なトポロジーです (図5参照)。これらのコンバータは、エネルギー伝達用の励磁インダクタと、タンクを特定の周波数で共振させる追加のコンデンサとインダクタを備えている、共振LLCタンクを使用します。コンバータはこの共振を使用してソフトスイッチングを実現し、高効率の電力変換を保証します。LLCコンバータの主な利点は、トランスで発生した漏れインダクタンスをタンク内の共振インダクタとして使用できることです。これにより、漏れインダクタンスによって誘発される電圧スパイクが排除され、フライバックトポロジーと比較して効率が向上します。

図5: LLCトポロジー
例としてMPQ18913を使用すると、LLC共振トポロジーは、代表的なPSRフライバックトポロジーと比較していくつかの注目すべき利点を提供します。そのような利点の1つとして、フライバックトポロジーではスイッチング周波数 (fSW)は400kHz未満にとどまりますが、LLC共振トポロジーでは、最大10MHzまで達するfSWにより、ソリューションサイズが減少することです。この結果、ソリューションの全体サイズは、同様の電力レベルを使用するフライバックアプリケーションよりも40%小さくなります。LLC共振トポロジーのもう1つの大きな利点は、絶縁電圧が最大5kVに容易に達することができるという事実です。従来のフライバックソリューションは1.5kVにしか到達しないため、より厳格な絶縁電圧要件に対応できます。
表1は、LLC共振トポロジーとフライバックトポロジーを比較したものです。
表1: LLC共振トポロジーとフライバックトポロジー
パラメータ | LLC共振トポロジー | PSRフライバックトポロジー | 利点 |
スイッチング周波数 (fSW) | ハイ (最大10MHz) | ロー (400kHz未満) | 高周波により、ソリューションサイズを大幅に縮小可能 |
トランスサイズ | 13μH (11mm x 6mm) | 30μH (10mm x 10mm) | |
漏れインダクタンス | 共振タンクの一部として漏れインダクタンスを利用 | 漏れインダクタンスによる性能低下 | LLCでは、漏れインダクタンスにより効率を向上し、電圧スパイクを防止 |
絶縁電圧 | 高い (最大5kV) | 低い (1.5kV) | LLCは、より高い絶縁電圧を可能にして安全性を向上 |
絶縁容量 | 低い (6pF) | 高い (最大25pF) | ソリューションサイズを最大40%削減し、部品数を20%削減 |
パッケージサイズ | 2mm x 2.5mm | 4mm x 4mm | |
ダイオード (ツェナーダイオードを含む) | 3 | 6 | |
ソリューションサイズ | 109mm2 | 180mm2 | |
BOM部品 | 21個 | 26個 |
結論
高周波LLC電源は通常、低周波変換器よりも設計での実装と最適化が困難ですが、MPQ18913のようなICは、自動共振周波数検出や統合トランジスタなどの機能を備えたLLC電源を簡素化します。さらに、LLC共振トポロジーはソリューションサイズを縮小し、電気自動車の充電に使用されるような高電力充電ステーションの電力密度を高めます。充電インフラの改善され続けるにつれ、高電力充電アプリケーションや、車載型充電器、トラクションインバータ、DC/DCコンバータなどの自動車アプリケーションでSiC FETにバイアスをかけるために使用されているMPQ18913にご注目ください。
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