車載インフォテインメントシステム用電源の設計 (パートII)

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はじめに

本稿は、車載インフォテインメントシステムの電源設計をカバーする2つのパートからなるシリーズの第2回目です。パートIでは、車載インフォテインメントシステムのプライマリおよびセカンダリ電源の性能要件について説明しました。パートIIは、車載インフォテインメントシステムのカメラ電源とUSB充電に関する課題に取り組みます。

図1は、カメラ電源とUSB充電を含む自動車の電源アーキテクチャを示しています。

図1 : カメラ電源とUSB充電の電源アーキテクチャ

MPSは、設計者がサラウンドビューカメラの電源とUSB充電アプリケーションの要件を満たすのに役立つソリューションを提供します。

サラウンドビューカメラ電源ソリューション

最近の自動車に対しては、サラウンドビューカメラの画像処理を車のメインプロセッサに統合するという新たな需要が生まれています。図2は、通常は車の周りに配置されているサラウンドビューカメラモジュールが、長い同軸ケーブルを介してデータと電力を車内の中央処理装置 (CPU) に伝達しているところを示しています。

図2 : サラウンドビューカメラからCPUへのデータ伝達

一般的に、カメラ内部のモジュールの電源は5V未満です。長距離ケーブルでの電圧降下や他の要因 (コールドクランクなど) による電圧降下を考慮すると、一部の自動車メーカーはカメラへの電源を約8V〜10Vに設定していますが、これは自動車のバッテリに課題をもたらします。

たとえば、車がコールドクランク条件下でテストされている場合、バッテリ電圧は5Vまで低下する可能性があります。同時に、通常の動作電圧の範囲では最低9Vをサポートする必要があります。標準のステップダウンDC/DCコンバータの場合、カメラの電源レールがこれらの条件内にとどまることが難しい場合があります。2段階の電源アーキテクチャ (最初に降圧してから昇圧するアーキテクチャ) を使用できますが、このアーキテクチャは非効率的で、より多くのPCBスペースを占有します。

MPQ8873-AEC1は、複雑さを増すことなくこの問題を解決できるモノリシック同期整流DC/DC昇降圧コンバータです。このコンバータの利点を以下でいくつか説明します。

効率的なアーキテクチャ

図3は、2段階電源アーキテクチャと高効率のオールインワン昇降圧アーキテクチャを比較しています。

図3 : 電源アーキテクチャの比較

昇圧トポロジーでは、ENを引き下げ、ICをオフにしても、出力電圧 (VOUT) は依然入力電圧 (VIN) に等しいままです。追加のスイッチを直列に接続しない限り、後続の負荷を完全にオフにすることはできません。MPQ8873-AEC1のような単一段階の昇降圧ソリューションを使用することで、高効率を実現し、レイアウト面積を節約し、出力電源のENを完全に制御できます。

簡単なレイアウト

MPQ8873-AEC1は、VOUTを動的に調整できる4つの統合MOSFETを備えた昇降圧トポロジーを提供します (図4を参照)。

図4 : MPQ8873用の統合された4つのMOSFET

フィルタ・インダクティブコンデンサとブートストラップ (BST) コンデンサに加えて、周辺回路は単純で、従来の回路よりも必要な部品が少なくて済みます。

高効率

MPQ8873-AEC1は、10mΩのハイサイドMOSFET (HS-FET) とローサイドMOSFET (LS-FET)、および25mΩのHS-FETとLS-FETを統合します。VIN = 13.5V、VOUT = 11.5V、そして 負荷電流 (ILOAD) = 3Aのテスト条件下で、MPQ8873-AEC1の効率は95%を超えています (図5参照)。

図5: MPQ8873効率曲線 (VIN = 13.5V、VOUT = 11.5V、ILOAD = 3A)

向上したEMI

便宜上、MPQ8873-AEC1のレイアウトにより、設計者は入力および出力の電力ループを最小限に抑えることができるものとします。このデバイスは、EMIをさらに低減する周波数スペクトラム拡散 (FSS) もサポートしています。図6は、MPQ8873-AEC1の最小ループ設計を表したものです。

図6 : MPQ8873最小ループ設計

用途の広い車のUSB接続ポートソリューション

自動車の内部CPUは通常、アームレストボックスやフロントパネルなど、さまざまな場所にある複数のUSBからのデータを受信します。ハンドヘルドボックスにあるUSB充電ポートとデータポートには、USB充電ICとリモートエンドのハブチップが装備されています。これらのポートは、CPUに送信するデータをクラスター化します (図7参照)。フロントパネルにあるUSBポートは、USB充電機能を車載インフォテインメントシステムに統合します。これは、USB充電ICに新たな課題をもたらすかもしれません。

図7 : 複数のUSBからCPUに送信されるデータ

MPQ4228-C-AEC1は、USB充電ICが直面する問題に対処できるモノリシックなステップダウン・スイッチモードコンバータです。

優れた多様性

MPQ4228-C-AEC1 USB-AまたはUSB-Cとして設定できます。MPQ4228-C-AEC1は、USB BC1.2 CDPプロトコルをサポートしているので、その充電ポートは、電話と車がUSB出力とやり取りする間、約10Wから15Wの給電電力を提供できます。

図8 : USB-A、USB-C、CDCプロトコルをサポートしているMPQ4428-C

より詳細な検討事項

携帯電話の充電ケーブルの長さに加えて、車とフロントパネルのUSB充電ポートは一定の距離があります。これは、携帯電話のポートに到達する実際の電圧が車両のVOUTと大幅に異なる可能性があるということです。MPQ4228-C-AEC1は、ラインドロップ補償機能を提供します。つまり、充電電流が高くなると、 MPQ4228-C-AEC1のVOUTも高くなります。ラインドロップ補償スロープは、柔軟性と利便性のために外部抵抗を使用して設計できます。

安全な保護

携帯電話の充電ケーブルコネクタを間違ったポートに差し込むなど、車の充電ポートを使用しているときに事故が発生することがあります。MPQ4228-C-AEC1は、VBUS、DM、DP、CCなどのI/Oピンに対して短絡保護を提供します。この保護機能は、車の充電ICの損傷を防ぎます (図9参照)。

向上したデータシグナルチェーン通信

アイダイアグラム試験は、USB2.0信号の整合性を評価します。図9は、 MPQ4228-C-AEC1は、優れたアイダイアグラムパフォーマンスを示します。特に、MPQ4228-C-AEC1は、USB2.0 DMDPデータが150cmケーブルを使用してデバイスの内部データスイッチを通過するときに、アイダイアグラム試験に合格します。

図9 : アイダイアグラム試験に合格するMPQ4228-C

向上したEMIパフォーマンス

MPQ4228-C-AEC1は、EMIを向上する周波数スペクトラム拡散 (FSS) 機能を提供し、その評価ボードは、シールドおよびコモンモードインダクタなしでも国家規格のグレード5のテストに合格できます (図10参照)。

図10 : MPQ4228-CのEMIパフォーマンス向上

包括的なUSB-IF認証

MPQ4228-C-AEC1 USB-IFによって認証されています。特に、デバイス独自の過電流保護 (OCP) 機能により、デバイスはAppleのMFIR33認証試験に合格します。過電流過渡パルステストを実行する場合 (たとえば、出力が短絡した場合)、MPQ4228-C-AEC1は、VBUSを、短期の過電流状態の間、遮断せずに維持します (図1を参照)。

図11 : MPQ4228-Cの過電流負荷時におけるVBUS維持

結論

パートIでのプライマリおよびセカンダリ電源のレビューに続いて、パートIIでは、カメラ電源とUSB充電が直面する要件の課題に対するソリューションを提案しました。MPQ8873-AEC1は、サラウンドビューカメラモジュールのソリューションとして使用されましたが、MPQ4228-C-AEC1は、USB充電の課題を軽減するために使用されました。MPSは、最新の車載インフォテインメントシステムの設計に多くの利点を提供する、堅牢で柔軟なプロダクトポートフォリオを提供します。

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