車載インフォテインメントシステム用電源の設計 (パートI)

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はじめに

車載インフォテインメントシステムは、車のバス機構とインターネットをベースとした車載型の統合情報処理システムです。消費者の運転、車の情報リソース、娯楽、安全に対する期待が高まり続けるにつれて、車はより統合され、モジュール化されてきました。この傾向は、車載インフォテインメントシステムの研究開発、特に電源設計段階で新たな課題をもたらしています。

本稿は、車載インフォテインメントシステムの電源設計をカバーする2つのパートからなるシリーズの第1回目です。パートIでは、プライマリおよびセカンダリ電源の特性について説明します。パートIIでは、サラウンドビューカメラの電源と一般的な車のUSB接続ポートのソリューションを紹介します。

図1は、自動車の機械システムの代表的な電力構造を示しています。一般に、主な低ドロップアウト (LDO) は、マイクロコントローラユニット (MCU) およびコントローラエリアネットワーク (CAN) モジュールに電力を供給して、システムのモニタリングと起動を行います。2つのDC/DCコンバータは、メインプロセッサコアボードおよびその他の周辺モジュール (シリアライザ、デシリアライザ、チューナーICなど) に電力を供給します。別の電源がカメラモジュールに電力を供給します。最後に、車両のフロントパネル上にUSBポート専用のUSBチャージャICがあります。

図1 : 自動車の機械システムの代表的な電力構造

次のセクションでは、プライマリ電源とセカンダリ電源を選択するための主なパフォーマンス指標について説明します。

プライマリ電源の特性

システムのプライマリ電源は、オンボードバッテリに直接接続されています。このシステムは、電源コードの過渡干渉に対するEMS-ISO7637自動車耐性試験を含む、車載バッテリからのさまざまな極端な過渡状態に耐える必要があります。また、バッテリ上の他の機器との障害干渉を避けるために、プライマリ電源はEMI試験基準を満たす必要があります。

これらの要件については、周波数設定が可能な同期整流式の降圧スイッチングレギュレータであるMPQ4436Aについて検討してみましょう。MPQ4436Aのいくつかの機能には以下が含まれます。

  • 3.3V〜45Vの広い動作電圧範囲
  • 6Aの連続出力電流 (IOUT)
  • 18μAのスリープモード静止電流 (自己消費電流)
  • 内部48mΩのハイサイドMOSFETおよび20mΩのローサイドMOSFET (それぞれHS-FETおよびLS-FET)
  • 低EMIの周波数スペクトラム拡散 (FSS) をサポート
  • AEC-Q 100グレード1準拠

電源コードの障害に対するより強い抵抗

MPQ4436Aの入力電圧 (VIN) 範囲は、最大50Vの耐電圧をサポートします。ISO7637で規定されている、5aおよび5bのロードダンプのテストパルスでは、フィルタリング後の残圧に対して大きな安全性の余裕があります。

VINは3.3Vまで低くでき、動作電圧幅が広いため、ISO7637のパルス4コールドクランク試験に合格しやすくなっています。図2は、ロードダンプのテストパルスを示しています : 5aおよび5b

図2 : テストパルス5aおよび5b (ロードダンプ)

図3は、コールドクランクテストパルス4を示します。

図3: テストパルス4 (コールドクランク)

優れたEMIパフォーマンス

MPQ4436Aは、次の3つの主要な機能によりEMIの最適化を実現しています。

  1. スイッチング周波数 (fSW) 拡散テクノロジー: 高電流条件下でEMIを改善するために、MPQ4436Aでは周波数拡散スペクトル (FSS) を使用して、fSWポイントの近くに、±10%の周波数ジッタを追加します。これにより、ピークEMIノイズが大幅に減少します。
  2. 対称なピンパッケージ設計 : MPQ4436Aは対称なピンパッケージで設計されており、高周波ループ、VIN、GNDに対して適正な分配を実現しています。高周波コンデンサを対称に配置することによって、磁場を低減可能です。図4はVIN、SW、OUTピンの対称的なパッケージレイアウトを示しています。

図4 : 対称なピンパッケージのレイアウト

図5は、MPQ4436Aのパッケージリファレンスです。

図5 : MPQ4436Aパッケージリファレンス

MPQ4436Aは、CISPR25 Class5規格に直接合格できます。図6は、MPQ4436Aの平均的な伝導エミッションを示します。

図6 : MPQ4436A平均伝導エミッション

図7は、MPQ4436Aの平均的なアプリケーション回路を示します。

図7 : MPQ4436Aの平均的な放射エミッション

コンパクトなパッケージで優れた熱性能

MPQ4436AはQFN-20 (4mm x 4mm) パッケージで提供され、MOSFET 2個とサンプリング抵抗1個が不要です。

MPQ4436Aはソリューションサイズが小さいため、熱特性にも優れています。図8は、6Aにおいて、電圧が12Vから5Vに低下すると、温度は36℃上昇することを示しています。

図8 : 6AでのMPQ4436Aの温度上昇

図9は、MPQ4436Aのコンパクトなパッケージが効率的な放熱を実現していることを示しています。

図9 : コンパクトなサイズのMPQ4436A

並列処理をサポート

インフォテインメントシステムでは、プラットフォーム設計で高電流が必要になることがよくあります。MPQ4436Aは並列で動作できます。たとえば、2つのMPQ4436Aデバイスは、出力の位相が180°ずれた状態で並列動作が可能です。出力電力を増加させながら、位相がずれている入力を互いに重ね合わせることで、入力電流のリップルが減少し、EMIが改善されます (図10参照)。

図10 : 2つのMPQ4436Aの並列動作

セカンダリ電源の特性

セカンダリ電源は、一般に、高速通信ブロック (シリアライザ、およびデシリアライザ)、変調IC、システム保存、およびシステム内の他の周辺機器に電力を供給します。これらの周辺機器には、特定の電源オン / オフのタイミング要件があり、設計上の課題となりえます。

これらの要件に対応するために、MPQ2166Aを考えてみましょう。内部補償の、デュアルチャネル同期整流降圧レギュレータで、パルス幅変調 (PWM) 機能を備えています。

コンパクトパッケージと対称レイアウト

MPQ2166Aは、2in1タイプの降圧型コンバータで、コンパクトなQFN-18 (2.5mm x 3.5mm) パッケージで提供されます。デバイスは、最大3MHzの調整可能なスイッチング周波数 (fSW) をサポートします。この機能は周辺のインダクティブコンデンサの数を減らします。

EMIは、対称的なPCBレイアウトによって低減されます (図11参照)。両方のチャネルが180°位相がずれて動作可能なため、EMIはさらに低減されます。

図11 : MPQ2166Aの対称なピン配置

マルチレール電源設計により適した設計

MPQ2166AはチャンネルごとにEN、SS、PGの各ピンを用意しているので、各電源状態を個別にモニターしながら、チャンネルごとに起動時間を簡単に調整できます (図12参照)。

図12 : EN、SS、PGピンの分離

MPQ2166Aは、両方のチャネルで電流の柔軟性をサポートしており、2A / 2Aまたは3A / 1Aの電流分配を設定できます。

結論

電源設計は、高度な車載インフォテインメントシステムを開発する上で重要な検討事項です。本稿では、MPQ4436Aのプライマリ電源とMPQ2166Aのセカンダリ電源の要件と利点について説明しました。パートIIでは、カメラの電源とUSB給電に関する課題について説明します。

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