磁気センサによる信頼性を向上する触覚HMIの最適化

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はじめに
回転ダイヤルは、ヒューマンマシンインタフェース (HMI) としてさまざまなアプリケーションで使用されます。接触タッチインタフェースには、自動車や白物家電から携帯電話のタッチスクリーンまで、日常で使う機器のボタン、ノブ、ダイヤルが含まれます。これらのデバイスは、人間による入力を電気信号に変換するだけでなく、触覚フィードバックという重要な機能も提供します。これは、ユーザーが暗いコックピットの移動式キャビン内にいるときや、医療用ポンプの流量を調整するときなど、時間に敏感な状況での安全に関連した機能に特に役立ちます (図1参照)。ボタンは、視覚で識別する必要がなく、触って簡単に見つけられる必要があります。

図1 : 内部コンソールとステアリングホイールの制御
ただし、新しい設計は、新しいフォームファクタに適合し、追加機能を提供し、HMIの寿命を延ばす斬新なソリューションを生み出すために、常に限界に挑んでいます。従来のボタンと回転ダイヤルは、かなりの容積を占め、ボタンからPCBのはんだ接合部までの結合が強固で、接点が特定の限定された寿命の間だけ配置されているため、制限要因になることが多くあります。
たとえば、多くの白物家電は、一見シンプルな平面に一個のボタンがついたインタフェースをもっています。機械全体 (ノブを含む) は、長時間の操作で振動、温度変動、湿度にさらされます。この過酷な環境はノブの寿命に悪影響を及ぼし、ボタンのシャフトは、他の制御電子機器に湿気が入り込む経路になります。これらの問題の軽減には、費用がかかるかもしれません。
HMIアプリケーションに最新の磁気センサを使用することによって、全体的な設計コストを大幅に削減できると同時に、信頼性と機械設計の柔軟性を向上します。本稿では、HMIアプリケーションの最適化に関する基本的な考えと設計上の検討事項について説明します。
シンプルで費用効果の高い検出原理
統合されたホールベースの磁気角度センサが、磁場の回転を検出するために完備されています。たとえば、回転部品に小さなインジケータ磁石が取り付けられたセンサは、十分な機能をもった非接触の回転ノブを作り出します。磁石の回転軸に沿って磁気角度センサを配置するだけで、磁石の回転を通じてノブの実際の回転位置を検出できます。このセンサは、電子機器と触覚ロータ (例 : ワイパーポテンショメータ) の間に機械的な接続を必要とせずに動作します。磁気センサを使用することで、非常に長寿命なシンプルで信頼性の高い設計を実現します。
図2は、HMIアプリケーションを改善するために設計された、MPSの磁気センサであるMA800を使用した回転ノブを示しています。MA800は、 MPS独自のSpinAxis™テクノロジーを利用して、角度センサを小型で費用効果の高いパッケージに実装できるようにします。

図2 : 磁気検出を備えた回転ノブの断面
磁石とセンサのペア全体が小さな容積を占めるだけであるため、ベアリング、ディテント、またはライトガイドを介してノブの触覚または光学的外観をカスタマイズするための十分なスペースが残されます。図2に示す構成のフットプリントは、5mm x 5mm未満です。これは、ポテンショメータを選んだ場合に比べわずかなサイズで、通常、単一のエッジに沿って10mmの大きさです。
信頼のための設計と製造公差への適合
磁気センサは、非接触の原則により信頼性が高くなっています。これは、従来の同等品であるスリップリングやポテンショメータとは対照的です。これらには、通常、約250,000サイクルの寿命をもたらす接触の問題で悪評があります。ただし、磁気センサにもある種の限界があります。これらの限界とゆがみはいかなるもので、どのようにして回避できるのでしょうか?
ゆがみの最初の潜在的原因として、回転軸に対するセンサの横方向の変位があります。これらの変位は、製造中の不正確さが原因で発生する場合、または寿命全体にわたってデバイスが摩耗したり、裂けたりすることで発生する場合があります。これにより磁気の非リニア性が発生し、センサによって検出されます。
たとえば、図1に示す設定では、0.5°未満の不一致は、横方向の公差が±0.2mmであるということになります。これは、代表的な製造公差の範囲内です。何らかの理由でより多くの許容誤差が必要な場合は、より大きな磁石の直径またはリング磁石を使用して、堅牢な設計を実現できます。例として、磁石の直径を5mmから8mmに増やすと、横方向の公差が±0.4mmに上昇します。
磁石の寸法は、磁石とセンサの間のエアギャップの変化を処理するために不可欠です。このようなズレが、センサの位置での磁束密度を必要な条件の外に追いやらないことが重要です。図2では、MA800の仕様を超えることなく、エアギャップは0.0mm〜3.1mmの間で変化します。この機械設計の柔軟性は、空気と磁石のサイズの兼ね合いによって、製造公差の要件を満たすために使用できます。たとえば、ターゲットの磁石の幅をより広くすることで、エアギャップを大きくできます。
本稿では、すべての磁気分析は公開されている磁気シミュレーションツールを使用して実行されています。このシミュレータにより、設計者は特定の磁気構成を素早くチェックし、公差やミスアライメントの影響について詳細な調査を実行できます。
プッシュボタン
一部のHMIアプリケーションでは、回転機能に加えてプッシュボタンが必要です。MA800は、エアギャップの変化が磁場強度の変化を起こした場合に、プッシュボタンのイベントを検出します。図3は、プッシュボタンを組み合わせたノブの代表的な状況を示しています。

図3 : プッシュボタン機能を備えた回転ノブの断面
図4は、磁石からセンサまでの距離に関連する磁場勾配と、単一しきい値と二重しきい値の違いを示しています (以下で詳しく説明)。軸方向の変位1mm、公称のエアギャップが1.5mmとギャップ0.5mmの押し込まれた位置で、60mTの磁場の差が生じます。MA800は、調整可能な磁気しきい値を備えており、システムコントローラへの個別の出力信号を通じて、この遷移に対して確実にフラグを立てます。

図4 : MA800を使用したプッシュボタンの実装
この非接触プロセスは、摩耗のない検出の原則です。機械の寿命の変化が検出の信頼性を低下させないようにすることが重要です。図4は、代表的な構成の磁場強度の曲線上に、MA800の磁気しきい値および関連するヒステリシス間隔を重ね合わせたものです。公称の磁気設定は、両方の終点が磁気スイッチングのしきい値まで十分な距離を持つように設計されており、時間の経過とともに蓄積する可能性のある異物が、スイッチングのしきい値を超えない位置への機械的移動を妨げないようにします。
軸方向の移動に沿った磁場の差が、複数のスイッチングのしきい値を確実に通過できるほど十分に大きい場合、高い磁場強度と低い磁場強度を検出するために異なるしきい値を使用することが推奨されます。図4は、このような二重のしきい値構成のスケッチです。二重のしきい値は、ボタンが中央の位置で動かなくなった場合に機械的な障害を検出するので、アプリケーション全体に安全機能を追加します。
非接触の検出機能を選択する場合 (およびそれによってノブやボタンから接触の問題を取り除く場合)、プッシ型の構造が最大の制限要因になります。図3は、軸方向のクリック磁石がシャフトの鋼のリングを引き付ける概念も示しています。これら2つの間の磁力は軸方向への移動のしきい値を作り、材料定数とコーティングを介して簡単に調整できます。さらに、この概念では生涯にわたって摩耗がありません。
低電力でコンパクトなソリューションの選択
低電力のバッテリ駆動アプリケーションのために、MPSはMA782も提供します。MA800で説明したのと同じ磁気設計原理は、MA782にも適用されます 。このセンサのリフレッシュレートは設定可能で、センサの平均消費量を10µA未満に低減できます。
加えて 、MA782は、動きが特定の角度しきい値を超えたことを示す専用信号を提供します。このようなウォッチドッグの状況で、角度センサがシステム全体のウェイクアップトリガとして機能し、マイコン (MCU) とディスプレイをスリープモードのままにして、バッテリの電力を大幅に節約します。
MA782として、また、UTQFN-14 (2mm x 2mm) パッケージでも提供され、超低電力の検出と小型のフットプリントを兼ね備えています。この独自の組み合わせは、家庭のワイヤレスサーモスタットや折りたたみ式携帯電話のヒンジ制御などの新しいアプリケーションに役立ちます (図5を参照)。

図5 : センサおよびウォッチドッグとしてMA782を備えた折りたたみ式電話のヒンジ
これらのセンサの小さなフットプリントと低電力機能は、回転軸上またはヒンジの端にセンサ (およびPCB) を配置する余裕がない厳しい設計に適しています。MA782のようなデバイスは、回転軸から離れた磁場を特別な補正を行い検出して、機械的角度とセンサ出力の間の線形関係を正確に回復します。
結論
磁気センサを使用してHMIダイヤルとボタンを実装する場合、触覚エレメントと電子機器の構造を分離して、周囲の構造に十分なスペースを与えるなど、ソリューションを設計する際に考慮すべきさまざまなオプションがあります。本稿では、比類のない長寿命と低消費電力を備えた非接触で費用効果の高いHMIソリューションを設計するための簡単な設計ガイドラインについて概要を説明しました。
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