インテリジェントなDC/DC電源モジュールで最大250A出力電流を実現

Heng Yang、シニアアプリケーションエンジニア、MPS

 

ワイヤレスネットワークとデータセンターの帯域幅の増加によって駆動される高性能FPGAおよびASICアプリケーションが増加し、高電力密度、高速負荷過渡応答、およびインテリジェントな電源管理機能を備えたパワーレギュレータが必要となります。内蔵インダクタを備えたMPSの高度な電源モジュール MPM3695シリーズは、FPGAとASICに電力を供給するための多様なソリューションを提供します。MPM3695シリーズは、複数部品によるPOLソリューションと比較して最大60%の高い電力密度、簡略化されたPCBレイアウトと電力段設計を提供し、しかも最小限の外部部品、パワーコンバータおよび補償ネットワーク設計に対する最低限の専門知識しか必要としません。MPM3695シリーズの電源モジュールは、高度なパッケージング技術を備えたパワーICとカスタマイズされた集積インダクタのモノリシック構造により、他社の電源モジュールと比較して最大40%の実装面積削減を達成します。

高出力密度の実現

FPGAおよびASICアプリケーションの電力密度が高くなる傾向は、電源モジュール設計に課題をもたらします。コンパクトな電源モジュールは、本質的に、高効率な動作と良好な熱管理の両方を必要とします。MPM3695シリーズは、電源モジュールからPCBへの直接かつ効率的な放熱を可能にするリードフレーム・パッケージ技術を採用することにより、パッケージサイズと電流処理能力を最適化します。MPM3695シリーズは、異なる出力電圧と電流範囲に合わせて調整された4つの電源モジュールを提供します。

MPM3695-25は、3.3~16Vの入力範囲、0.5~5.5Vの出力範囲を備えた、インテリジェントなステップダウン25A電源モジュールです。出力電流は、複数のMPM3695-25を並べて、最大250Aに対応できます。図1に、MPM3695-25の上側と下側を示します。10mm x 12mm x 4mmのQFNパッケージに収められたMPM3695-25は、最大25Aの電流処理能力をもつ1つのモノリシック降圧コンバータと1つのインダクタを集積しています。MPM3695-25の電力密度は2.25kW/inch3で、25Aクラスで最も高い電力密度を持つ極わずかの市販の電源モジュールの1つです。高い電力密度は、その高効率な動作によって可能になります。12V入力でのMPM3695-25の効率曲線を図2に示します。MPM3695-25の効率は、3.3Vの出力電圧でピークの94%、主な動作範囲で80%以上です。

Figure 1: MPM3695-25, 25A Power Module

図1: MPM3695-25 25A 電源モジュール

Figure 2: Efficiency Curve of MPM3695-25 at 12V input

図2: MPM3695-25の効率曲線 (12V入力)

MPM3695-10は、超薄型の10Aステップダウン電源モジュールで、出力電流を最大60Aまで拡張可能です。1.6mmの高さは、電源モジュールをPCBの底面に配置することを可能にし、高密度設計のための貴重な基板スペースを節約します。図3に、MPM3695-10 の上側と下側を示します。MPM3695-10の入力電圧範囲は3.3~14Vで、出力電圧範囲は0.5~3.3Vです。コンパクトな8mm x 8mm x 1.6mmのQFNパッケージに収められたMPM3695-10は、3.7kW/inch3の電力密度を提供します。

さらに、MPM3695シリーズは2つの高効率化版、MPM3695A-25およびMPM3695A-10は0.5~1.8Vの間の出力電圧範囲を備えています。

Figure 3: MPM3695-10, Ultra-Thin 10A Power Module

図3: MPM3695-10 超薄型10A 電源モジュール

FPGAとASICの動的負荷は、本質的にコア電力の電圧要件を満たすために、パワーレギュレータからの高速過渡応答を要求します。負荷過渡の間に出力電圧を維持するために必要な出力コンデンサは、相当な基板面積を占めます。MPM3695シリーズは、特許取得のマルチフェーズ・コンスタント・オンタイム (MCOT) 制御方式を採用することによって、出力コンデンサの要求を最小にしています。MCOT制御により、電力モジュールは過渡イベント中にスイッチング周波数を動的に調整し、出力コンデンサからのエネルギー需要を最小限に抑えることができます。定常動作の下で、MCOT制御はマルチフェーズ構成のためのインターリーブ動作を保証し、入出力電流リップルを最小に導きます。さらに、MCOT制御方式は、従来の電流および電圧モード制御方式で使用される複雑な補償ネットワークの必要性を排除することにより、コンバータ設計を簡素化します。図4は、200A/μsスルーレートでの25%負荷電流ステップの条件でのMPM3695-10モジュールの実験波形を示しています。コンバータは1.2Vの出力電圧で動作します。評価ボードには、2台の47μF出力コンデンサが取り付けられています。波形の結果に示すように、47μF出力コンデンサは2個で負荷電流過渡中に±3%より良好な出力電圧偏差を維持できます。

Figure 4: Experimental Waveform of a 25% Load Step on MPM3695-10 with 1.2V Output

図4: 1.2V出力を使用したMPM3695-10における25%負荷ステップの実験波形

スケーラブルでスマートな電源モジュール

MPM3695シリーズはモジュール式で拡張可能な設計を採用しており、各モジュールは内蔵インダクタを備えたスタンドアロンのパワーコンバータブロックであり、より高い電流を処理するために簡単に並べることができます。MPM3695シリーズの並列接続とインテリジェントな機能の概念を図5に示します。MPM3695シリーズのモジュール機能により、PCBレイアウトと電力ステージ設計が簡素化され、開発リードタイムを最小限に抑えることができます。設計エンジニアは、さまざまな電圧レールでの異なる電流要件に対して、同じレイアウト設計を簡単にコピーして貼り付けることができます。さらに、モジュール設計により、備蓄する必要がある部品の数を最小限に抑え、保有コストを削減します。

 MPM3695 Series Offers Scalability and Programmability

図5: MPM3695シリーズは拡張性とプログラム可能性を提供

MPM3695シリーズの高度でスマートな機能により、電源モジュールはインテリジェントな電源管理システムと連携できます。図5に示すように、MPM3695シリーズはPMBus 1.3を備えており、電源モジュールは動作条件と状態 (電圧、電流、温度、および、さまざまな故障アラートを含む) を報告し、ホストからコマンドを受信できます。MPM3695シリーズは、故障しきい値、スイッチング周波数、タイミング、伝導モードなど、多くの重要な機能に対するプログラム可能性を提供します。MPM3695シリーズは、リアルタイムのオン / オフ制御と出力電圧設定にも対応できます。MPSが開発したユーザーフレンドリーなGUIであるVirtual Bench Proと組み合わせることで、MPM3695シリーズは、さまざまなアプリケーションのニーズに合ったカスタマイズ可能な性能を提供します。

結論

MPM3695シリーズは、短い市場投入期間、高電力密度、インテリジェントな電源管理を求められる今日のFPGAや通信アプリケーション向けの電源ソシューションです。MPM3695シリーズのモジュール機能により、回路図やレイアウト設計の労力を最小限に抑えることができます。革新的なMCOT制御方式を採用しており、複雑な補償ネットワークを設計するために必要な専門知識は必要ありません。プログラム可能な電源管理機能をもち、どのようなアプリケーションにも対応します。

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