不安定な電源シャットダウンプロセスを回避する方法

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はじめに
私たちが日常生活で使用する電化製品 (照明からコンピュータまで) は、通常、電源を切るときにシャットダウンプロセスを実行します。電源には、予期しないオーバーシュートを制御できる安定したシャットダウンプロセスが必要です。安定したシャットダウンプロセスでは、電源は入力電圧 (VIN) をスムーズに0Vに落とします。
安定したシャットダウンには、安定したVIN降下が必要で、負の出力電圧 (VOUT) のオーバーシュートとVINまたはVOUTのリバウンドがないことが必要です。本稿では、電源のシャットダウンプロセス中に観察される3つの不安定な波形について説明します。本稿では、これらを次の3つのクラスのいずれかに指定します : クラスR (急速なVINとVOUTリバウンド)、クラスG (負のVOUTオーバーシュート)、およびクラスB (遅延したVINとVOUTのリバウンド)。
クラスRシャットダウン (急速なVINとVOUTリバウンド)
図1は、クラスRのシャットダウン波形を示しています。クラスRのシャットダウンでは、デバイスがシャットダウンするとVINは着実に低下し、エネルギースパイク中に一時的に増加し、その後再び着実に低下し始めます。
図1 : クラスRのシャットダウン波形
クラスRの波形には、以下で説明するように2つのタイプがあります。
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クラスRシャットダウン (タイプI)
DC/DCコンバータ再起動時に、クラスRタイプIのシャットダウンは発生します。
標準的なシャットダウンを考えてみしましょう。VINがチップのターンオフしきい値まで低下すると、チップはシャットダウンします。VOUTはこのプロセスで低下し、電流が急激に減少します。ただし、チップの入力ラインで、このプロセス中に誘導性リアクタンスから過剰なエネルギーを放出する場所がない場合、VINが急激に増加します。
VINがチップの動作しきい値を超えると、チップは動作を再開し、単調ではないシャットダウン波形になります。SW側にスイッチがある場合、クラスRの波形はタイプIとして分類されます (図2参照)。
図2 : クラスRタイプIシャットダウンのライン寄生インダクタンス
クラスRタイプIの波形は、比較的簡単に防ぐことができます。チップの仕様は、イネーブル (EN) とVIN低電圧誤動作防止機能 (UVLO) のパラメータを提供します。図3は、ステップダウンパワーモジュール用であるMPM3683-7用のイネーブルとUVLOの仕様を示します。
図3 : MPM3683-7仕様
これらの仕様を考慮すると、次に説明するように不安定なシャットダウンを回避する方法には2つあります :
- 入力フィルタリングを最適化し、入力インダクタンスを低減し、容量が大きく、等価直列抵抗 (ESR) と等価直列インダクタンス (ESL) が小さいコンデンサを選択し、入力コンデンサをICのできるだけ近くに配置することにより、VINのバウンスを抑えます。
- VINがUVLOしきい値まで低下するときにENがオフになるように、ENに対して適切な上下電圧の抵抗分圧器を選択します。これにより、ICの再起動を防げる可能性があります。
クラスRシャットダウン (タイプII)
負荷が急激に減少した場合、統合された出力インダクタまたは出力ラインインダクタに蓄積された過剰なエネルギーはどこにも放出できません (図4参照)。これにより、短時間でVOUTが大幅に増加する可能性があります。
図4 : クラスRタイプIIイベント
図5に、クラスGのシャットダウン波形を示します。クラスGのシャットダウンでは、VOUTは着実に低下し、その後目標値を超えて急速に低下して (負のオーバーシュートと呼ばれる)、再び上昇して目標値に戻ります。
図5 : クラスGシャットダウン波形
クラスRの波形と同様に、クラスGの波形は2つのタイプに細分化できます。
クラスGシャットダウン (タイプI)
降圧回路のローサイドMOSFET (LS-FET) がシャットダウン中にオフにならない場合、インダクタ電流は逆流し続けます。この状況は、無負荷および軽負荷条件下でより一般的であり、VOUTが下がりすぎることがあります。
この問題を防ぐために、DC/DCコンバータは通常、シャットダウン中にゼロ電流検出 (ZCD) を追加し、電流が0Aに達したことを検出すると (一般にZCDポイントと呼ばれる)、LS-FETを自動的にオフにします (図6参照)。このアプローチにより、シャットダウン中の負のオーバーシュートを効果的に防ぐことができます。
図6 : クラスGタイプIでの負のオーバーシュート防止
クラスGシャットダウン (タイプII)
VOUTは、出力ラインの寄生誘導性リアクタンスにより負のオーバーシュートが発生する可能性があります (図7参照)。このタイプのシャットダウンは、重負荷時または出力短絡故障時に発生する可能性が高くあります。
図7 : クラスGタイプIIの寄生誘導リアクタンスを低減
クラスGタイプIIのシャットダウンを防ぐために、出力ラインの誘導性リアクタンスを最小限に抑える必要があります。さらに、負荷端子の容量を大きくする必要もあります。
クラスB波形 (遅延したVINとVOUTのリバウンド)
図8は、重負荷時に発生するクラスBのシャットダウン波形を示しています。クラスBの波形では、VINとVOUTの両方が急激に降下し、短期間上昇し、その後 (VOUTのように) 安定した状態を維持するか、(VINのように) 再び降下します。どちらの状況もリバウンドと呼ばれます。
図8 : 重負荷時のクラスBのシャットダウン波形
クラスBの波形はクラスRの波形に似ていますが、クラスRの波形は配線のインダクタンスによるものであり、クラスBの波形にはかなり遅れたリバウンドがあります。最初のシャットダウンの後、VOUTとVINは通常、クラスRのシャットダウンによりマイクロ秒単位でリバウンドします。ただし、VOUTとVINはクラスBのシャットダウンでは、最大数十ミリ秒の間リバウンドしない場合があります。
誘電体吸収効果により、クラスBの波形が発生します。入力コンデンサの放電電流が大きく、その後突然0Aに低下した場合、コンデンサ内の誘電体は以前に吸収された電荷の一部をゆっくりと放出します。放電電流が再びチップの起動電圧に達すると、VOUTはリバウンドします。
クラスBのシャットダウンを防止するために、クラスRタイプIのシャットダウンに使用される方法と同様に、ENを介してチップの電源を切ることができます。ENがオフのままであることを保証するために、VINの低電圧保護 (UVP) しきい値とヒステリシスを選択します。これで、VINのリバウンドがチップのパワーオンのしきい値を超えず、誤って再起動することはありません。さらに、余分な電荷を消費するために静的負荷を加えることもできます。
結論
本稿では、安定性の向上と負のオーバーシュートの防止を目的として、電源のシャットダウンプロセスに関連する3つの異なるタイプのシャットダウン波形 (クラスR、クラスG、およびクラスB) について検討しました。これらのクラスは、過剰なエネルギーと負荷の条件に応じて、さらに細分化されていました。
詳細については、MPSの堅牢なステップダウンパワーモジュールの一覧をご覧ください。
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