安全な駆動: 高電力アプリケーション用絶縁型ゲートドライバ

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はじめに
新しい技術と市場の傾向として、より高電力機能を備えたより小さなソリューションが常に求められています。電気自動車、再生可能エネルギーマイクログリッド、大規模なエネルギー貯蔵、および高出力通信アプリケーションの進歩により、電力密度への要件が大幅に高まっています。
以前は特定の高電力アプリケーション用に用意されていた電圧および電力レベルが、日常のアプリケーションでますます一般的になっています。これは、以前は許されていた性能上の問題が今は許されないということです。これらのアプリケーションでの主な制限は、従来、電源のスイッチングテクノロジー、特にシリコン半導体の性能限界でした。最近、ワイドバンドギャップ (WBG) 半導体がこの問題を解決しはじめたため、高電圧、高周波電力コンバータの設計が可能になりました。
しかし、高出力と高速動作の組み合わせにより、設計者がコンバータを設計するときに直面する新しい問題が発生しました。本稿で説明する主な問題の1つは、電力変換ブロックの高電圧と制御ブロックの弱くて小さい信号回路間での不要な結合の危険性です。
絶縁型ゲートドライバの必要性
ゲートドライバは、ほとんどの電力コンバータで共通の素子です。制御回路は低電圧で動作するため、コントローラは電源スイッチをすばやく安全に開閉するのに十分な電力を供給できません。その結果、コントローラからの信号はゲートドライバに送られ、ゲートドライバは、非常に高い電力に耐え、必要に応じてMOSFETのゲートを駆動できます。
高電力または高電圧のアプリケーションで作業する場合、回路内の素子は大きな電圧シフトと大電流にさらされます。パワーMOSFETから制御回路への電流リークがある場合、電力変換回路に含まれる高電圧と高電流で、トランジスタが熱で壊れることにより、制御回路の大規模な故障を容易に引き起こす可能性があります。さらに、高電力アプリケーションでは、ユーザーおよびコンバータの下流に接続された他のICの両方を保護するために、入力と出力を絶縁する必要があります。
絶縁は、それぞれに独自の利点を有する、さまざまなメカニズムと材料を使用して実装できます。しかしながら、今日、高性能システムで最も一般的に使用されている方法は容量結合です。これは、インダクティブ絶縁よりもはるかに少ないスペースで済み、フォトカプラよりも信頼性が高く、比類のない絶縁容量を提供するためです。図1に、絶縁したドライバを示します。

図1: 絶縁したドライバの回路図
容量性アイソレータは、直列に接続された2つのコンデンサがベースになります。これらのコンデンサはシリコンダイ上に構築され、誘電体として酸化シリコンを使用しています。これらのコンデンサを厚い誘電体で構築することにより、故障することなく非常に高い電圧ピークに耐えることができます。アイソレータは、コントローラからのPWM信号を高周波信号に変調し、次に差動電圧ペアを設けて、この情報をコンデンサに送信します。このようにして、変調された信号は、データを失絶縁障壁を通過できます。障壁を通過した後、信号はドライバ回路とやりとりする前に復調されます。
容量性絶縁の主な利点は、絶縁したドライバ全体を1つのチップに簡単に統合できることです。これは、コンデンサが他のドライバ部品と同じ標準的なマイクロエレクトロニクスプロセスを使用して作られているためです。絶縁したハーフブリッジ・ゲートドライバであるMP18831のような、ハイサイドとローサイドの両方の電源スイッチ用のドライバを備えたICを実装することも可能です。
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重要な仕様: 絶縁とCMTI
絶縁したゲートドライバの重要なパラメータの1つは、絶縁電圧定格です。適切な絶縁定格を持つことは、電源に接続されている他の回路を破壊する、予期しない過渡電圧を回避することを目的しており、潜在的に有害な電流放電からユーザーを保護するために重要です。さらに、この定格により、ノイズや予期しないコモンモード電圧過渡によって引き起こされる干渉をなくし、コンバータ内の信号を維持できます。
絶縁は通常、絶縁層が耐えることができる電圧の量として表されます。ほとんどのデータシートでは、絶縁電圧は、最大ピーク絶縁電圧、動作絶縁電圧、RMS絶縁電圧などのパラメータとして紹介されています。
しかし、電圧と周波数の増加により、ゲートドライバは非常に大きなスルーレートをもつ高振幅の電圧シフトに直面します。これらの電圧の過渡応答が十分な速さになると、電圧の特定の高周波成分は、従来の絶縁方法ではブロックできない可能性があります。コモンモード過渡絶縁 (CMTI) は、これらの高周波電圧成分が絶縁障壁を越えて結合するのを防ぐことにより、回路を保護します。
バス電圧とスイッチング周波数が増加し続けるにつれて、CMTIはゲートドライバでますます重要になっています。CMTIが十分に高くない場合、高電力ノイズが絶縁型ゲートドライバ全体で結合され、電流ループが生成され、スイッチゲートに電荷が発生します。この電荷が十分に大きい場合、ゲートドライバがこのノイズを駆動信号と誤って解釈し、シュートスルーによる深刻な回路の誤動作を引き起こす可能性があります。図2は、不十分なCMTIが原因で、電荷が絶縁障壁を越えてどう結合するかを示しています。

図2: 不十分なCMTIによるドライバを介した電荷結合
絶縁型ゲートドライバ保護: ミラークランプとDESAT保護
絶縁障壁を通過する寄生結合が、シュートスルーの唯一の原因ではないかもしれません。スイッチノードからの電圧は、トランジスタ自身内にある寄生結合を介してトランジスタのゲートに結合することもできます。この結合は通常、ミラーコンデンサと呼ばれるMOSFETの同等の寄生コンデンサを通じて生じます。ただし、ミラーコンデンサは、高周波、高電圧のスイッチング中に深刻な問題を引き起こす可能性があります。
コンデンサの自然なハイパス動作により、高周波電圧はミラーコンデンサを通じて結合し、MOSFETのゲートとチャネル間の絶縁障壁をバイパスします。
これは、電流がゲートノードにわたって流れ、ゲートを充電し、スイッチをトリガーする可能性があることを意味します。これが発生すると、バス電圧とGND間のパスが直接確立され、シュートスルー電流が発生し、コンバータの効率が低下します。
アクティブ・ミラークランプは、コンパレータと追加のMOSFETで構成される低インピーダンスパスであり、ハイサイドFETがオンになるとローサイドFETのゲートをグランドに接続します。このプロセスは、ミラーコンデンサを流れる電流をゲートからグランドにリダイレクトし、ゲートの電荷が減少し、不要なゲートの駆動を回避します。図3は、ミラークランプがある場合とない場合のスイッチングハーフブリッジの過渡クロスコンダクションの原理を示しています。図3aはミラークランプなしの原理を示し、図3bはミラークランプありの原理です。

図3: スイッチングハーフブリッジの過渡クロスコンダクションの原理
ゲートでのこの電荷蓄積は、脱飽和などの他の問題を引き起こす可能性もあります。脱飽和は、MOSFETが意図せずに非線形領域に入るプロセスです。この動作領域は非常に非効率的であるため、電力変換に使用されることはありません。消費電力が増加するため、システムの効率が低下するだけでなく、スイッチが破壊される場合もあります。これを回避するために、DESAT保護回路はスイッチの両端の電圧を検出し、脱飽和のしきい値を超えるとゲートへの電力供給を停止します (図5参照)。

図4: MOSFETの動作領域と脱飽和保護の回路図
結論
増加した電力要件と対になったWBG半導体の導入によってもたらされたスイッチング周波数の増加は、絶縁を電力コンバータ設計の重要な要素にしました。高い絶縁性とCMTI定格は、電源につながったユーザーとデバイスが偶発的な漏電によって害を受けないようにするための鍵です。脱飽和保護やアクティブ・ミラークランプなどの保護機能により、MOSFETは安全に動作し続けます。
MPSは、設定可能なデッドタイム制御を備えたハーフブリッジ・コンバータトポロジー用に特別に設計されたデュアルチャネルドライバである、MP18831などのような、さまざまな絶縁型ゲートドライバを提供します。MPSの絶縁型電源製品の詳細については、絶縁型製品カテゴリのページをご覧ください。
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