逆極性保護回路の設計 (パートII)

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はじめに

これは、逆極性保護回路の設計に関する2部構成シリーズのパートIIです。パートIでは、カーエレクトロニクス製品の逆極性保護機能を必要とする、さまざまなパルス妨害について述べ、PチャネルMOSFETを使用した逆極性保護回路の機能について説明しました。パートIIでは、NチャネルMOSFETと昇降圧ドライバICを備えた逆極性保護回路について説明します。

NチャネルMOSFET

NチャネルMOSFETとドライバICを使用して逆極性保護回路を設計する場合、NチャネルMOSFETはハイサイドに配置され、ドライバICが電力を受け取る場所でもあります。入力電圧 (VIN) を超える内部電圧が生成され、ゲート・ソース間電圧 (VGS) が供給され、NチャネルMOSFETに電力を供給します。

駆動電源の生成原理に基づくと、駆動ICはチャージポンプ方式または昇降圧方式のいずれかになります。これらの方式について、以下で説明します。

  • チャージポンプ逆極性保護方式 : チャージポンプ方式では、全体的なBOM要件が低く、コストが低くなります。この方式は、自動車のUSB電源デバイス (PD) や高出力充電モジュールなど、電流が小さいアプリケーションに最適です。
  • 昇降圧逆極性保護方式 : 昇降圧方式は、強力な駆動能力と優れたEMC性能を提供します。この方式は、車載用ドメインコントローラやオーディオシステムなどの大電流で高性能な環境に最適です。

図1は、チャージポンプと昇降圧方式の特性を示しています。

図1 : チャージポンプと昇降圧方式

ドライバICの動作原理

図2は、チャージポンプトポロジーを備えたNチャネルMOSFETドライバの簡単な動作原理です。

図2 : チャージポンプトポロジーの動作原理

CLKサイクルは次のとおりです :

  1. S1とS2がオンになる
  2. C0グランドに対して内部電圧源によって充電される
  3. S3とS4がオンになる
  4. C1がC0にかかる電圧によって充電される

C0は、充放電の速度が速い小さなコンデンサです。C1は高負荷容量の大型コンデンサです。したがって、S1とS2 (およびS3とS4) を頻繁に切り替えることにより、C0の電荷はC1に継続的に転送すると同時に、C1のマイナス端子をバッテリ電圧 (VBATT) に接続できます。その結果、NチャネルMOSFETはVBATTを超える電圧で駆動されます

図3は、チャージポンプトポロジーを備えたNチャネルMOSFETドライバの簡単な動作原理です。

図3 : 昇降圧トポロジーの動作原理

昇降圧トポロジーは、パワーMOSFETをローサイドに配置します。S_BATがオンの場合、VINは、インダクタを充電し、インダクタの電圧は負になります。S_BATがオフの場合、インダクタはダイオードを介してエネルギーを放出し、インダクタ電圧は正でC1を充電します。この方式では、VBATTを超える電圧がC1に発生し、NチャネルMOSFETのゲートを駆動します。

昇降圧ドライバICの利点

逆極性保護ドライバICで昇降圧ドライバICを使用することには、2つの重要な利点があります。それは、ドライバ電流能力の強化と、EMC性能を向上させることです。

駆動電流能力

GS、および負荷電流 (緑) を駆動するMOSFETが含まれます。

図4 : 昇降圧トポロジーの波形 (重畳ACリップルパルス = 100kHz、ピークツーピーク値= 2V)

波形は、ドライバICがNチャネルMOSFETのドレインとソースをリアルタイムでモニタしていることを示しています。このシナリオでは、VINソース電圧 (VS)、およびシステム電圧はドレイン電圧 (VD) と一致します。

VSが、VDを下回る場合、VINはシステム電圧を下回り、MOSFETドライバがオフになります。ボディダイオードは逆極性保護機能により、コンデンサ電流が逆流するのを防ぎます。VSがVDを超えると、VINがシステム電圧を超え、MOSFETドライバがオンになります。これにより、ボディダイオードの導通が防げられるので、効率に影響を与えます。

それに比べて、チャージポンプ逆極性保護ドライバを使用した場合、VINが急激に変動するため、駆動電流能力が弱いと、ゲートドライバの異常なパルス損失や、意図しないターンオンパルスが発生する傾向があります。

チャージポンプの逆極性保護回路を使用して測定された波形について検討しましょう (図5参照)。これには、逆極性保護MOSFETの入力ソース極電圧 (黄色)、出力ドレイン極電圧 (赤)、VGS (緑) の駆動、および負荷電流 (青) が含まれます。

図5 : チャージポンプトポロジーの波形

ゲートドライバパルスが失われると、MOSFETは駆動されません。その間、ボディダイオードがオンになり、かなりの熱損失があります。ターンオンの瞬間に、大きな充電電流スパイクがあります。

ゲートドライバパルスがオンの場合、MOSFETは通常オンです。その間、電解コンデンサの充放電が繰り返されるため、発熱が大きくなります。

向上したEMCパフォーマンス

昇降圧トポロジーは、EMCの性能も向上します。チャージポンプはインダクタンスがなく効率が低いため、非常に高い動作周波数を必要とする容量性スイッチング電源です。一般的に、積分容量は小さく(pF範囲内)、外部容量は大きくなります(µF範囲内)。その結果、チャージポンプのスイッチング周波数 (fSW) は10MHzを超えます。この高周波はEMIの問題を引き起こす場合があります。

昇降圧ドライバICを使用すると効率が向上します。固定ピーク電流制御を採用することで、負荷が軽いほど、より低いfSWに対応できます。したがって、昇降圧トポロジーはEMCの性能を向上させます (図6参照)。

図6 : 昇降圧トポロジーの一定なピーク電流

MPQ5850-AEC1の紹介

MPQ5850-AEC1は、外付けNチャネルMOSFETを駆動して、ショットキーバリアダイオードを置き換えることで、逆入力保護用を実現するスマートダイオードコントローラです。車載用のコールドクランク条件に最適で、TSOT23-8パッケージで提供されます。

図7は、チャージポンプトポロジーと昇降圧トポロジーであるMPQ5850-AEC1のEMC性能を比較しています。チャージポンプトポロジーではEMCの問題が発生する可能性がありますが、MPQ5850-AEC1は国家基準のレベル5試験に合格しています。

図7 : チャージポンプトポロジー 対 MPQ5850-AEC1

結論

パルス妨害のさまざまな試験基準に合格するには、最適な逆極性保護回路設計を実現することが重要です。従来のPチャネルMOSFET回路と比較して、NチャネルMOSFET回路はドライバ電流能力とEMC性能を改善します。特に、MPQ5850-AEC1は、逆入力保護を提供し、国内のEMC規格に合格しています。詳細については、コンパクトなパッケージで使いやすく安全なソリューションで業界をリードする、MPSのロードスイッチとスーパーバイザをご覧ください。

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