2層車載用PCB設計における6Aデバイスの熱挙動の比較

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はじめに

定格電流はDC/DCコンバータの代表的なパラメータで、見込まれる最大周囲温度 (TA) はPCBサイズとICの熱抵抗により異なります。本稿では、自動車の専門家が小型の2層PCB (60mm x 40mm) 上の従来の6Aデバイスと比較した、MPSのMPQ4326-AEC1の熱挙動について調査します。

2層レイアウトの使用

計画された製造コストとPCBサイズによって、必要な層の数 (通常は2層) が決まります。2層車載用のPCB設計では、DCスイッチング電源の部品配置は、EMCおよび熱仕様を満たすように慎重に検討する必要があります。

方法

本稿では、MPQ4326-AEC1と6A定格の従来デバイスの厳密に一致する2層レイアウトをテストします (図1参照)。各レイアウトには固有の部品の位置があると同時に、ポリゴンとビアの配置が一致しているため、これらのレイアウトの熱性能と効率性能の違いを比較できます (図2と図3参照)。

図1は、MPQ4326-AEC1の代表的なアプリケーション回路図を示しており、従来の6Aデバイスに非常によく似ています。

図1 : MPQ4326-AEC1の代表的なアプリケーション回路図

どちらのICも同じ外付け部品のパッケージサイズとレイアウトを使用しているため、効率と熱性能を実際通りに1 : 1で比較できます。いくつかの異なるIC固有の値には、フィードバック、スイッチング周波数抵抗、ピン配置の詳細が含まれます。

図2は、MPQ43262-AEC1のPCB部品の配置を示しています。

図2 : MPQ4326-AEC1 2層のPCB (60mm x 40mm) 部品の配置

図3は、従来の6AデバイスのPCB部品の配置を示しています。

図3 : 従来の6Aデバイスの2層 PCB (60mm x 40mm) 部品の配置

両方のPCBレイアウトには、最下層に対して共通のGNDプレーンがあると同時に、標準のFR-4エポキシ上の層間が1.55mmで35μmの銅の厚さがあります。オプションの白金測温抵抗体 (RTD) を使用すると、PCBの温度を測定できます。

効率測定

効率は、DC/DCコンバータの出力電力 (POUT) から入力電力 (PIN) への電力の商として定義されます。効率は、デバイス固有のパラメータ、アプリケーション固有のパラメータ、およびPCB固有のパラメータによって決まります。これらのパラメータについては、以下で詳しく説明します。

デバイス固有のパラメータ

  • ハイサイドMOSFETとローサイドMOSFET (それぞれHS-FETとLS-FET) のチャンネルオン抵抗 (RDS(ON))
  • シリコンダイとパッド間の機械的接触の電気抵抗
  • MOSFETをどれだけ速くオン / オフできるかを決定する立ち上がり時間と立ち下がり時間
  • 内部回路 (ゲートドライバやロジックなど) の消費電力
  • ジャンクション温度 (TJ)

アプリケーション固有のパラメータ

  • 入力電圧 (VIN) と出力電圧 (VOUT)
  • スイッチング周波数 (fSW)
  • 負荷電流 (ILOAD)
  • 対流と周囲温度 (TAIR)

PCB固有のパラメータ

  • レイアウトのトレース、ポリゴン、ビア、スイッチングインダクタンスサイズによってヒートシンクが作り出され、TJに影響します。
  • スイッチングインダクタンスの電力損失 (PIND) は、一般的な効率測定方法ではPINDはDC/DCコンバータの追加損失として考えられます。

2つのDC/DCコンバータの効率を1 : 1で適切に比較するには、アプリケーションとPCBパラメータは同じである必要があります。図4は、2つのPCBの比較を示しています。

図4 : MPQ4326-AEC1と従来の6Aデバイスの2層PCBの比較

テストセットアップ

図5は、効率と熱画像を測定するためのセットアップを示しています。ここでは、同じ電源が同じ長さの電源ケーブルと負荷ケーブルを使用して両方のPCBを駆動します。効率は、電流と電圧の4線技術を使用して測定されます。測定点はVIN用電解コンデンサ上とVOUT用の出力MLCCの上にあります。

図5 : 効率と赤外線熱画像のためのテストセットアップ

各PCBには、調整可能な定電流で個別に負荷をかけることができます。IRサーマルカメラは、両方のPCBの温度プロファイルを同時に記録します。PCBは、表面、ケーブル、空気の対流が一致する同じ条件で動作するため、周囲温度と同等の熱放散が得られます。

MPQ4326-AEC1は、JESD51-7熱テストPCB上でILOAD = 6A、および、接合部と周囲の熱抵抗θJA = 46.7°C/Wの定格をもつQFN-14 (4mm x 4mm) パッケージで提供されます。従来の6Aデバイスは、JESD51-7熱テストPCB上でILOAD = 6A、および、θJA > 46.7°C/W の定格をもつQFN-14 (3.5mm x 4mm) パッケージで提供されます。

θJA、JEDEC JESD51-7テストPCBに、はんだ付けした場合、ダイ温度と周囲温度の熱の流れを1 : 1で比較できます。θJAが小さいほど、PCB上のICパッケージから周囲温度への熱の流れを向上できます。

効率曲線の比較

図6は、MPQ4326-AEC1の効率と総電力損失の曲線を示しています。VINは、オレンジの線が8V、赤い線が12V、緑の線が18V、青い線が26Vです。

図6 : 2層PCB上のMPQ4326-AEC1効率と総電力損失

図7は、従来の6Aデバイスの効率と総電力損失の曲線を示しています。図6と同様、VINはオレンジの線が8V、赤い線が12V、緑の線が18V、青い線は26Vです。

図7 : 2層PCB上での従来の6Aデバイスの効率と総電力損失

同じアプリケーションとPCB条件下で、MPQ4326-AEC1はより高い効率とより低い総電力損失を実現します。したがって、高負荷電流における MPQ4326-AEC1のメリットは明らかです。

TPACKAGE = 150°Cの最大負荷電流 VS. 入力電圧

図8は、VINを掃引しながらIC上部のパッケージ温度 (TPACKAGE) を150°Cで一定に保っている場合に達成可能な最大ILOAD (ILOAD_MAX) を示しています。青い線はMPQ4326-AEC1を表し、赤い線は従来の6Aデバイスを表します。

図8 : TPACKAGE = 150°Cでの最大負荷電流

従来の6Aデバイスと比較して、MPQ4326-AEC1は同じ条件下とTPACKAGEで、最大1Aの追加ILOADに対応します。

VIN = 13.5Vでのパッケージ温度 VS. 負荷電流

図9はILOADを掃引する場合のTPACKAGEを示します。ここで、青い線は MPQ4326-AEC1を表し、赤い線は従来の6Aデバイスを表します。

図9 : VIN = 13.5Vでのパッケージ温度 VS. 負荷電流

ILOAD = 5.5Aで、MPQ4326-AEC1のTJは25℃まで従来の6AデバイスのTJを下回ります。MPQ4326-AEC1のメリットは重要です。安定した状態を確保するために、各測定ポイントは30分間安定化されています。

TPACKAGE = 150°Cでの最大負荷電流 VS. 入力電圧の熱画像

図10は、TPACKAGEが150℃に達する場合のそれぞれ異なるILOAD_MAXを持つ2つのPCBの赤外線画像を示しています。熱画像はVIN = 26V、VOUT = 5V、TAIR = 23°C、fSW = 2Mhz、およびtSETTLED = 30分でテストされています。各PCBのILOADは 両方のPCBのTPACKAGEが150°Cに達するまで最大値に調整されます。ILOAD_MAX = 5.4A、および、POUT = 27WにおけるMPQ4326-AEC1は左側に示されています。ILOAD_MAX = 4.4A、および、POUT=22Wにおける従来の6Aデバイスは、右側に示されています。

図10 : TPACKAGE = 150°C、および異なるILOAD_MAX値におけるMPQ4326-AEC1と従来の6Aデバイス

同じ条件下で、MPQ4326-AEC1は最大1Aの追加出力電流を達成できます。MPQ4326-AEC1のPCB (左) は、より高いPOUTとより高い入力電流により温度がわずかに高くなります。TPACKAGEは両方のPCBで同じであり、 シリコンから周囲温度まで、主にはんだパッド内でMPQ4326-AEC1パッケージの効率が向上し、θJAが低下していることを示しています。

VIN = 13.5Vでのパッケージ温度 VS. 負荷電流の熱画像

図11はILOADを掃引する場合のTPACKAGEの赤外線画像を示しています。熱画像はILOAD = 5.5A、POUT = 27.5W、VIN = 13.5V、VOUT = 5V、TAIR = 23°C、fSW = 2MHz、および tSETTLED = 30分でテストされます。ILOADはPCBの1つのTPACKAGEが150°Cに達するまで最大値に増加します。TPACKAGE = 129℃におけるMPQ4326-AEC1は左側に示されています。TPACKAGE = 154℃における従来の6Aデバイスは、右側に示されています。

図11 : MPQ4326-AEC1と従来の6AデバイスのTPACKAGE vs. ILOAD

同じ条件下では、MPQ4326-AEC1のTPACKAGEは従来の6Aデバイスよりも25°C低いままです。従来の6AデバイスのTPACKAGEが154℃に達する時、ILOAD = 5.5Aで測定が停止します。これにより、TPACKAGEがさらに増加してサーマルシャットダウンを引き起こすことを防ぎます。

結論

本稿では、MPQ4326-AEC1、および公称ILOAD = 6Aに指定されている従来の6Aデバイスを使用して測定しました。TPACKAGEと ILOAD_MAXでの違いにより、規定の定格電流は小型で低コストのPCBで実現できます。MPQ4326-AEC1は、効率、最大負荷電流、パッケージ温度、熱測定にわたって、効率と総電力損失の低減において重要なメリットを実証します。

2層 (60mm x 40mm) PCBの熱流が不十分であるため、より高いTA値で動作させる場合、PCB のサイズとテクノロジーを調整する必要があります。さらに、1 : 1比較テストでは、PCBの熱流能力、パッケージの熱抵抗、効率に応じて、6A DC/DCコンバータが一貫して6AのILOADを供給できないことが証明されています。

MPS製品は、公称電流の仕様を提供します。アプリケーションの仕様に合わせた PCBの最適化の詳細については、MPS FAEにお問い合わせください。また、MPSのスイッチングコンバータとコントローラの幅広い選択肢をご覧くだい。

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