Vcore DrMOS最適化のためのPCB上ACR損失の解析とシミュレーション
Eric Braun、スタッフサイエンティスト / Jinghai Zhou、テクニカルマーケティング&アプリケーションエンジニアリングディレクター / Danny Chang、テクニカルマーケティング&アプリケーションエンジニアリングシニアマネージャー / Huaifeng Wang、Huawei設計開発エンジニアリングマネージャー
プリント基板 (PCB) のメインループリップル電流抵抗損失は、スイッチング電源損失要素として無視され、見落とされることが多いです。これらの損失は、高電流のVcoreや高リップル電流で動作する他のアプリケーションにとって大きな損失になる可能性があります。Ansys社のQ3D Extractorソフトウェアは、代表的なVcore電力段のPCBレイアウトでメインループリップル電流の周波数依存抵抗を抽出するために使用されています。この損失成分を含めると、スイッチング周波数の関数としてモデル化され、測定された総損失の間の相関が大幅に向上します。負の周波数係数のPCBと能動素子の損失、および制の周波数係数のMOSFETの従来型のスイッチング損失間におけるバランスポイントのピークの効率を実現するスイッチング周波数を最適化するための分析表現が開発されました。
はじめに
降圧コンバータの電力損失をモデル化した過去の研究では、主に半導体デバイスの損失1,2,3,4,5、に焦点を当て、受動素子の損失はあまり注目されず1,2、一般的にPCB損失、特にPCBのACR損失は無視されてきました。これらの損失を推定するために、Ansys社のQ3Dソフトウェアが、代表的なVcore DrMOSアプリケーションのPCBメインループACRを抽出するために使用され、そこから関連するリップル電流ACR損失が計算されます。これらの損失は、ピークツーピークのリップル電流の増加による周波数の減少に伴って非リニアに増加し、従来の損失分析予測よりも高いスイッチング周波数でのピーク効率が低くなります。
PCBメインループACRモデル、シミュレーションと計測
同期整流降圧コンバータの主な電力損失の要素としては、能動素子の損失 (MOSFET DCおよびスイッチングによる損失、MOSFETドライバの損失) 、受動素子の損失 (インダクタDCR / ACRおよびコアの損失、コンデンサESRの損失)、およびプリント回路基板の損失 (PCB DCR / ACRの損失) に集約できます。
PCBの周波数依存損失は、式 (1) で与えられたコンバータのメインループで循環する鋸歯形のリップル電流によるものです。
(1)
ここでRacはリップル電流波形の周波数依存性のPCB有効抵抗です。ピーク効率の動作条件下で比較的大きなリップル電流を持つVcore DrMOS同期整流降圧コンバータは、研究事例を提供します。PCB ACR損失コンポーネントを推定するために、多相Vcore PCB電源ステージレイアウトの単相部分をAnysis社のQ3Dソフトウェアにインポートしました (図1aを参照)。図1bに、Q3DでシミュレーションされたPCBメインループリップル電流循環経路におけるAC電流分布を示します。
図1: Vcore PCBメインループQ3D構造モデルとAC電流シミュレーション
Q3D周波数依存抵抗抽出は、図2に示す基板レベルのLCR測定と密接に一致します。さらに、PCB周波数依存性は、式 (2) に示す理想的な表皮効果モデルに合理的に従っています。
(2)
電力段の鋸歯形波形パワー損失計算に有効なリップル電流抵抗 (Rac) は、15%のデューティサイクル三角形波に適用される重み付けフーリエ解析によって推定され、その結果、シミュレートされた基本的なスイッチング周波数成分ACRの約1.1倍の同等の電力損失計算ACRが得られます。
図2: シミュレートおよび測定されたVcore PCBメインループ周波数依存抵抗 (ACR)
総コンバータ損失のモデル対測定
スイッチング損失の総測定は、Vin = 12V、Vout = 1.8Vの代表的な動作条件で推奨される150nHインダクタを利用した単相Vcore DrMOS評価ボードで行われ、結果として得られたピークツーピークのリップル電流 (Ipp) は700kHzで約14.5Aとなりました。15A負荷電流でのコンバータの電力損失は、400kHzから2.5MHzの周波数範囲で解析され、損失部分が700kHzで抽出されました (図3および図4を参照)。MOSFETの損失は、ICの測定とシミュレーションの組み合わせによって推定されました。インダクタ巻線のACR損失はQ3Dでのシミュレーションに基づいており、インダクタコア損失とDCR損失はサプライヤのデータシートに基づいて見積もられました。出力POSCAP ESR損失は、POSCAPをセラミックスのものに置き換えて測定された電力損失差に基づいて抽出されました。PCBのACR損失は、上述のQ3Dソフトウェアの周波数依存解析から導出されました。PCB ACR損失は、リップル電流抵抗損失の約25%を占め、ピーク効率動作周波数700kHzでの総損失の約5%を占めました。
図3: 700kHzでのVcore DrMOS電力損失成分
全体的な電力損失は、式 (3) で表すことができます。
(3)
AはDC電源損失、B × f は周波数比例のMOSFETスイッチング電力損失、C × f−1.5はリップル電流抵抗電力損失です。最小の全体の電力損失を解決する場合、周波数に比例するMOSFET電力損失がリップル電流損失の1.5倍に等しい場合にピーク効率の周波数が検出されます。このクロスオーバーは、調査中のVcore DrMOS動作条件で約700kHzで発生します (図4参照)。
図4: Vcore DrMOS電源損失と周波数
結論
メインループリップル電流のPCB抵抗損失は、大きな損失成分であり、ピーク効率を従来の解析推定方法を大幅に下回る範囲で制限することができます。これらの損失は、効率と周波数推定を改善するためにQ3Dソフトウェアの抵抗抽出シミュレーションを使用して合理的に推定することができます。ピーク効率の動作周波数は、PCBのACR損失係数を含まない場合よりも高いことがわかります。ドライバとMOSFETのモノリシックな集積により、MPSのDrMOS ICは本質的に、この損失係数を軽減するため、より高い周波数の動作が可能です。
1 Gregory Sizikov, Edy G. Fridman, and Michael Zelikson, “Efficiency Optimization of Integrated DC-DC Buck Converters,” IEEE ICECS、2010、pp. 1208-1211
2Volkan Kursun, Siva G. Narendra, Vivek K. De, and Eby G. Friedman, “Efficiency Analysis of High Frequency Buck Converter for On-Chip Integration with a Dual-VDD Microprocessor,” ESSCIRC,2002,743-746
3Yuancheng Ren, Ming Xu, Jinghai Zhou, Fred C. Lee, “Analytical Loss Model of Power MOSFET,” IEEE、Power Electronics, Vol.21 NO.2、2006、pp. 310-319
4Wison Eberle, Zhiliang Zhang, Yan-Fei Liu, and Paresh C. Sen, “A Practical Switching Loss Model for Buck Voltage Regulators,” IEEE、Power Electronics, Vol.24 NO.3、2009、pp. 700-712
5Yali Xiong, Shan Sun, Hongwei Jia, Patrick Shea, and Z. John Shen, “New Physical Insights on Power MOSFET Switching Losses,” IEEE、Power Electronics, Vol.24 NO.2、2009、pp. 525-531
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