A/Dコンバータ MDC91128を使用した走査型X線画像のデジタル化

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はじめに

X線イメージングは、医療診断からセキュリティスクリーニング、食品検査まで、幅広いアプリケーションに使用されており、必要に応じて材料、欠陥、数量を識別することができます。どのように使われるかにか関わらず、X線が正確で高品質の画像を提供することは極めて重要です。

MDC91128は、高度に統合された低ノイズの電流入力 アナログ・デジタル・コンバータ (ADC)で、 2D X線、3Dコンピュータ断層撮影 (CT)、およびチャネル数の多いその他のフォトダイオード・アプリケーションをスキャンするように設計されています。図1は、MDC91128を使用したシステムからの実際のX線スキャンを示しています。

図1 : MDC91128を使用して撮影したX線画像

走査型X線システム

手荷物スキャナやその他のセキュリティ、および品質検査に使用される代表的な走査型X線アプリケーションでは、線源がX線を生成し、コンベアベルト上のX線の下を通過するターゲットに向けられます (図2参照)。

図2 : 走査型X線検出器

X線がターゲットを通過すると、通過する物質の密度に応じて減衰します。X線をデジタル表現に変換するには、いくつかの手順があります。最初に、移動するコンベアベルトの下で、線形 (幅1ピクセル、長さ数ピクセル) のフォトダイオード検出器アレイが、ターゲットを通過するX線にさらされます。

シリコンフォトダイオードは、X線光子よりもはるかに効率的に可視光の光子を検出するため、シリコンフォトダイオード上にシンチレータ物質が積層されています。この物質は、X線の励起に応答して可視光の光子を生成します。次に、シンチレータの下にあるフォトダイオードアレイが、その可視光に比例する小さな電荷を生成します。

各ピクセルの信号が電気的な領域になると、アナログと混合信号ICが信号を処理してデジタルデータに変換することが可能です。MPSのMDC91128を、フォトダイオードアレイの出力に直接接続して使用することでデジタル化できます。

MDC91128の紹介

このADCは、128の並列信号パスを備えた電流入力 ADCです。各チャネルは、アンプと20ビットまたは16ビットのデルタシグマ (ΔΣ) ADC のADCで構成されています (図3参照)。MDC91128は、 MPS によって提供されるΔΣ ADCsファミリの一部です。

図3 : MDC91128ブロック図

センサアレイは、各フォトダイオードがMDC91128の入力ピンの1つに電流を供給するように接続されています。平均電流 (I) は、受け取った電荷量 (Q) を積分時間 (t) で割った値に等しく、I は式 (1) で計算できます。

$$I=\frac{Q}{t}$$

入力幅と積分時間は、予想されるフルスケールの電流に従って選択できます。MDC91128は、4pC~25pCまでの入力幅および166µs~100msの積分時間に対応します。10pCの入力と100msの積分時間が、100pAの平均フルスケール入力電流をサポートします。それと同時に、25pCの入力と250µsの積分時間が、100nAの平均フルスケール入力電流をサポートします。この設定可能性により、MDC91128は幅広い信号レベルにわたるアプリケーションに対応できます。

128の入力チャネルは2つの64チャネルバンクにまとめられ、入力幅と積分時間を個別に制御できます。次に、統合アンプの出力電圧は、ADCによって選択可能な16ビットまたは20ビットのデジタル結果に変換されます。MDC91128のアーキテクチャにより、デッドタイムのない連続した積分期間が可能になり、すべての露光を損失なしに捕らえることが保証されます。

入力幅が25pCに設定され、入力容量が20pFの場合、MDC91128はフルスケール範囲で19ppm未満の二乗平均平方根 (rms) ノイズを達成します (図4参照)。これは2,728個の電子に相当し、ダイナミックレンジの高いX線スキャンを可能にします。

図4 : MDC91128のノイズ性能

変換されたデジタルデータは、シリアルポート経由でアクセス可能なオンチップFIFOバッファに供給されます。バッファは、MDC91128の128チャネルごとに2個の結果 (20ビットまたは16ビット) を保持します。これにより、MDC91128からデータを読み取る際のシステムのタイミングの課題が軽減されます。シリアルポートは最大40MHzで動作し、デュアル出力で80Mbpsのデータ転送速度をサポートします。

通常、走査型X線検出器には128を超えるチャネルが必要なため、MDC91128の出力データはデイジーチェーンでカスケード接続できるようになっています。これにより、直列に接続された複数のMDC91128データコンバータICからのデータを順次リードバックできようになります (図5参照)。

図5 : 複数 MDC91128 ICのカスケード接続

結論

MDC91128は、設定可能性、高性能、および統合の組み合わせを提供し、走査型X線システムおよび産業用イメージングに費用対効果の高い高品質の画像を提供します。MPSは、 X線イメージング、データ取得システム、モバイル通信に使用できるデータコンバータのファミリを拡大しています。

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